沖縄の強い日差しが校庭を照りつけていた。小学6年生の巴瑠は、友達の瑠偉と一緒に登校日の準備をしていた。

「今日の午後、プールで50メートル競争しようぜ」巴瑠が明るく提案すると、瑠偉はメガネを押し上げながら小さくうなずいた。

「まあ、いいけど。でも僕はそんなに速くないよ」

「大丈夫だって！楽しければそれでいいんだから」

その時、教室のドアが静かに開いた。見慣れない少女が、恥ずかしそうに立っている。

「えーっと、転校生の美瑠ちゃんです」先生が紹介すると、クラス中がざわめいた。美瑠は小さく頭を下げただけで、すぐに用意された席に座った。

巴瑠は何となく気になって美瑠の方を見たが、彼女は下を向いたまま顔を上げようとしなかった。

昼休み、いつものように光璃と珠梨も加わって、5人は中庭で昼食を食べていた。

「美瑠ちゃんて、どこから来たの？」光璃が優しく話しかけても、美瑠は「本土……」と小さく答えるだけだった。

「僕たち、午後にプールで泳ぐんだ。良かったら一緒に来ない？」巴瑠が誘うと、美瑠の目が少しだけ輝いた。

「……いいの？」

「もちろん！」

珠梨が釣り竿を調整しながら呟いた。「まあ、新しい仲間が増えるのは悪くないけど」

午後のプールは、夏の日差しでキラキラと輝いていた。巴瑠と瑠偉は50メートル競争の準備をしていたが、美瑠は一人、プールサイドに座って足だけを水に浸けていた。

「美瑠ちゃんは泳がないの？」光璃が隣に座ると、美瑠は初めて長い文章で話した。

「実は……私、来週には転校することになってるの。だから、あまり仲良くなっても意味ないかなって」

光璃は驚いた。「えっ、もうそんなに早く？」

「お父さんの仕事で。2学期を待たずに本土に戻るの」

その時、美瑠の心の中で小さな決意が芽生えていた。この勝負の結果で、自分の運命を決めよう。もし巴瑠が勝ったら、きっと彼についていこう。瑠偉が勝ったら……

「よーし、始めるぞー！」巴瑠の声が響いた。