清真の声が、神殿内に低く響き渡る。その蒼い瞳は、心配と怒りで燃えるように輝いた。花凜を支える腕にかすかな震えが走る。
「なんだと!」
誰かが彼女を傷つけた——その事実が、清真の怒りを目覚めさせていた。
呪毒は、生命力を乱し能力を不安定にさせる薬だ。致命傷を与えることはないが、数時間にわたって激しい不調と混乱をもたらし、術者の能力を一時的に封じる。
「だが、ここへ来るまでには、何も疑わしいものは無かった。一体どこで……」
清真が具合の悪い花凜の代わりに、彼で分かることを答える。葵が素早く思案し、丁寧に問いかける。
「経路ではないとすれば……」
「花凜さま、こちらへ来られてから、何か口にされたものはありますか?」
花凜はぼんやりとした意識の中で、記憶を辿る。ひどいめまいに耐えながら、それでも彼女はかすれた声で答えた。
「この月神殿の使用人の方が、持ってこられたお茶を……口にしました」
その花凜の言葉に、清真と葵が抱いていた疑惑の謎が繋がった。
「すぐに調べてまいります」
葵は即座に神殿の控え室へ向かった。その姿は、忠実な影のように素早く、会場の混乱に紛れて消えていった。
***
混乱に包まれた神殿で、人々が恐怖に震えながら逃げ惑っている。
その時、群衆の中から一人の女性がゆっくりと前に出てきた。それは花凜の継母の志津だった。高価な着物に身を包んだ志津が、まるで舞台の主役のように堂々と立ち上がる。
彼女の顔には作り物の驚愕が浮かび、その瞳は計算された感情で輝いていた。混乱の最中にあって、志津だけが異様に落ち着いている。
民衆に向かって、志津が澄まし顔で大声を上げた。
「まあ、封印をわざと破壊するなんて!」
志津が大声で叫んだ。彼女の声には、練り上げられた偽りの驚きが込められていた。
「私は、はっきり見ました! あの女性の月詠み師さまが、封印を破壊する所を!」
「そうです!」
乙音も母のそばに駆けつけて続けた。声色に毒を隠し、瞳の奥には炎のような憎悪が宿っている。
「先ほどから様子がおかしかったでしょう! まがい物の月詠み師だから、力が制御できないのよ!」
志津と乙音の糾弾に、動揺した民衆の間でざわめきが起こった。
「確かに、さっきから様子がおかしかった」
人々の声が交錯する。苦しむ花凜の姿を見て、疑念を抱く者も現れ始めた。月詠み師への期待が大きかっただけに、その失望は深い動揺となって広がっていく。
怨霊が飛び交う中、花凜に向けられる視線は複雑に分かれていた。避難しながらも振り返って心配そうに見つめる者、恐怖に震えながらも困惑する者、そして逃げる足を止めて疑いの目を向ける者。パニックの最中でありながら、人々の間で意見が割れている。
「でも現に封印が破れて……きゃあ!」
「あの月宮家の月詠み師様が、そんなことしないわよ!」
「でも様子がおかしかった!」
擁護する声と疑う声が、怨霊への悲鳴と混じり合う。恐怖と混乱の中で、見えない分裂が生まれている。
「清真さま、……これはもしかして、私のせいなのでしょうか?」
控え室で飲んだ茶の中に、呪毒というものが含まれていた。だとしても儀式の最中に体調が悪化し、霊力が不安定になったのは確かだった。もしかしたら、その影響で大切な封印を破壊してしまったのかもしれない。
花凜の声は震えていた。自分の力が及ばなかったのではないかという不安が、彼女の心を支配していく。
ふらつく足で踏みとどまりながら、花凜は清真を見上げた。
清真は花凜の震える肩を抱き寄せた。彼の横顔は月光のように美しく、そこには微塵の迷いもなかった。
「――花凜」
「これは君のせいではない。何か企みの匂いを感じる」
自分の名を呼ぶ清真には、花凜への絶対的な信頼が静かな確信となって刻まれていた。混乱と恐怖に包まれた神殿で、その眼差しだけが、今の花凜を支える唯一の光だった。
***
神殿の混乱の中、志津と乙音は群衆に紛れて高笑いを響かせていた。
「ククク……ついに! ついにやったわ!」
志津の口元が醜く歪む。美しかった顔は今や憎悪と狂気で完全に醜悪になっていた。
「お母さま、見てください! あの花凜の顔!」
乙音が指差しながら狂ったように笑う。彼女の美貌も、嫉妬の炎で焼き尽くされて鬼のように変わり果てていた。
「『月欠け』の分際で!思い知ったでしょう!」
乙音が冷酷に微笑んでいる。
「ええ、お母さま。花凜の人生、完全に終わりましたわ」
「あの憎たらしい小娘が……ついに……ついに!」
志津の爪が自分の手のひらに食い込むほど強く握りしめられる。
「みんなが花凜を疑ってる! 清真さまも困惑してる!」
乙音の声が、狂気で上ずっている。
「これで終わりよ、花凜! お前の人生は終わり!」
志津が拳を振り上げて叫ぶ。
「あはははは! あははははは!」
志津が狂ったように笑い続ける。もはや人間の笑い声ではない。
「死ね死ね死ね! 名誉もすべて失った。大勢から責められ、花凜なんて絶望して死んでしまえ!」
乙音も同じように狂い笑いを続けている。
「これで清真さまは私を見直してくださる。『乙音こそが真の花嫁だった』と」
「そうよ!そして私は月宮家の姑として君臨するの!」
志津の言葉に、二人は再び狂ったように笑い始めた。
***
一方、神殿の控え室では葵が鋭い眼光で使用人たちを見据えていた。茶器を調べ、一人ひとりに事情を聞く彼の追及は的確で容赦がない。
「誰が、花凜さまの茶を用意したのか」
葵の低い声に、使用人たちは震え上がった。
やがて一人の男が観念したように項垂れる。その者の懐から金貨の入った小袋が見つかった時、葵の表情が険しくなる。
「清真さま! こちらの者が白状いたしました」
葵が神殿の使用人を引きずるようにして、清真と花凜のもとへ連れてきた。使用人は恐怖で顔色を失い、震えている。人々まで巻き込んだ大きな騒動への罪悪感。額に浮かぶ冷や汗が、彼の罪の意識を物語っていた。
「申し訳ありません! まさかこんな大事になるなんて思いもせず」
「……貴族のような女から金を貰って、花凜さまの茶に薬を。ただ少し体調崩すだけだ、危険なものではないと聞いておりました」
使用人が震え声で告白した。彼の声は後悔におびえ、泣き崩れた。
空からクロが羽音を響かせて舞い降りてきた。清真の式神である三つ目のカラスは、鋭い眼力を持っている。額の第三の目が光り、見たままの真実を主人に告げる使命を帯びていた。
「清真、重要な報告だ。さきほど藤里家の夫人ども——志津と乙音が封印の破壊を花凜のせいにして、人心を扇動していたぞ」
クロの第三の目が不思議な光を放っていた。その光が嘘偽りを見抜き、隠された悪意を暴く。
「この騒ぎは、そのためか」
クロの報告を聞いた瞬間、清真の周りの空気が凍りついた。月光のように美しかった彼の表情が、一瞬にして嵐の夜の海のように変貌する。その口調は氷河の下を流れる激流のように冷たく、そして危険だった。
「花凜に呪毒を仕掛け、そしておそらくはこの封印を破った騒ぎも。すべて藤里家の夫人たちの仕業か……」
彼の怒りは静かに、しかし確実に燃え上がっている。銀髪が月光を受けて不吉に輝き、蒼い瞳の奥に宿る炎が、見る者の魂を凍らせるほどに鋭かった。
「義母と義妹が……」
花凜の声は小さく震えていた。ショックで言葉が続かない。でも心のどこかでは、この結末を予感していたことに気がついた。継母たちの憎悪に満ちた瞳、自分への理不尽な仕打ち——全てが繋がっていた。
信じたくなかった真実。彼女の胸を痛みが締め付ける。
清真が花凜を見つめる。その瞳には、深い愛情と痛切な懸念が交錯し映っていた。彼女の苦痛を自分のことのように感じ、その身に代わりたいと願うほどに。
「ひどい顔色だ。……辛いだろう、花凜」
清真の指先が、そっと花凜の頬に触れる。優しく、彼女の痛みを和らげようとする温もりに満ちていた。
「ここで君は休んでいるといい。後は俺が全て片付ける」
彼の声は低く、しかし絶対的な力強さを秘めていた。
「どんな虚偽も、君の真実の輝きを曇らせることはできない。大丈夫だ、花凜」
「君の濡れ衣は必ず——必ず、この俺がはらしてみせる」
清真の声には揺るぎない確信があった。彼の言葉一つ一つが、花凜の心に勇気を注ぎ込んでいく。
しかし花凜は、ゆっくりと首を振った。
彼女の黒髪が月光を受けて輝き、その眼差しには——怯えではなく、新たな決意が宿っていた。
「清真さま……」
花凜の声は、かすかに震えながらも、確かな意志を込めて響いた。
「お気持ちはとても、とても嬉しいです。清真さまが私を信じ、守ろうとしてくださる——」
彼女の瞳に、涙が光った。
「でも、私はもう逃げたくないんです」
その声には、かつてはうつむき怯えていた少女の中から、少しの勇気をだして立ち上がろうとする、新しい強さが響いていた。
「これまで私は、継母や義妹からの仕打ちを自分にとって仕方ないものだと、諦めて生きてきました」
花凜の声は、切ない記憶を辿りながらも、少しずつ力強さを増していく。彼女の周りを漂う月の光が、呪毒に乱されながらも少しずつ安定し始めた。
「母の位牌を壊された時も、思い出を踏みにじられた時も。でも本当は私は、心の中で必死に叫んでいました」
花凜は自分の胸に手を当て、痛みを思い出す
「あの日々は辛かったです。でも、あの経験があったから……」
花凜の声に、17歳の少女らしい素直さと、芽生えたばかりの強さが混ざり合う。
「人の悲しみがわかるようになりました。一人で泣いている人の気持ちも、誰にも助けを求められない人の気持ちも」
「そして何より——」
花凜は顔を上げ、清真を見つめた。その眼差しには、恋する少女の真っ直ぐさがあった。
「本当に大切なものを守りたいって、心から思う気持ちを知ることができました」
清真の蒼い瞳が、彼女の言葉に深く響いているのがわかった。
「清真さま、あなたが教えてくださったんです。私にも価値があること。そして守りたいものがあるって」
花凜の声が、神殿内に澄んで響く。まだ少し震えているけれど、確かな決意を込めて。
「だから——これは私の戦いです」
「私は月詠み師として……いえ、藤里花凜として、私の大切な人たちを守りたいんです」
その言葉は、少女が自分の意志で下した決断の重みを持っていた。
花凜の瞳に、月の光が宿った。それは少女が初めて見つけた『自分だけの輝き』だった。
彼女の全身から、清らかな月光が溢れ始める。それは呪毒に汚された体を清め、傷ついた心を癒していく。
清真の表情が、感動と誇らしさに満ちた笑みに変わった。
その蒼い瞳に映る花凜の姿は、もはや守られるだけの少女ではなく、自分の意志で戦うことを選んだ——彼の愛する人だった。
「君を誇りに思う、花凜」
清真の声には、深い愛情と敬意が込められていた。彼は花凜の手を取り、その細い指を大切に握りしめた。
「俺が花凜を支える。一緒に戦おう」
彼の言葉に、花凜の胸に甘い痺れが走った。指先に伝わる彼の温もりが、全身に広がっていく。こんなにも信頼してくれる人がいる。こんなにも大切にしてくれる人がいる。
本当の自分の強さ。それは清真との愛に支えられ、いま花開こうとしていた。
二人の手が強く握り合った時、不思議な光が神殿内を満たした。それは月の満ち欠けを一瞬で繰り返すような、神秘的な光の波動。
二人は並んで怨霊たちに向かった。清真は怨霊の攻撃を一身に引き受け、花凜が安全に浄化を行えるよう盾となる。花凜は清真が作り出した隙を見極め、的確に浄化の力を放っていく。
互いの役割を理解した、自然な連携だった。まるで清真の戦術が、花凜の心に直接伝わってくるかのように。
清真の剣が銀の軌跡を描き、怨霊たちを切り裂いていく。彼の剣筋は花凜を常に庇うように、怨霊の注意を自分に向けることを重視していた。月光を鍛え上げたような刃は、闇を払うように鋭く輝いていた。
「大丈夫か、花凜」
戦いの最中でも、清真の声には彼女を気遣う優しさが滲んでいた。振り返る彼の蒼い瞳に、心配と信頼が添えられている。
「はい、清真さま」
花凜の声には、震えが残っていた。それでも、彼への信頼が恐怖を上回っている。
花凜の月光が、清真が足止めした怨霊たちを包み込む。まだ体に残る呪毒に苦しみながらも、清真が前線で戦ってくれる安心感で浄化に集中できる。彼女の放つ光は、これまでとは違い、より純粋で安定した輝きを持っていた。
それは清浄な力で怨霊の憎悪を洗い流し、彼らを浄化させていく。清真が動きを封じた怨霊たちの姿が透明になり、その表情から憎しみが消えていく。
花凜の力は怨霊を破壊するのではなく、その魂を優しく包み込んで送り返す温かなものだった。一方、清真は一切の攻撃を花凜に向けさせず、全ての脅威を自分が引き受けていた。
「すごいな、花凜」
清真が感嘆の声を漏らす。彼の瞳には、誇らしげな光が宿っていた。
「清真さまと一緒だから……頑張れるんです」
花凜の頬がほんのり赤く染まる。彼女らしい素直な気持ちの表れだった。
前衛で戦う清真と、後衛で浄化を行う花凜の姿は、美しい絵巻物のようだった。清真の剣技が怨霊を抑制し、花凜の浄化の術がそれを救済する。完璧な役割分担で、怨霊たちは次々と浄化されていく。
怨霊たちの表情が、憎悪から安らぎへと変わり、光となって消えていった。彼らは浄化され、本来あるべき場所へと導かれていく。
重い怨念から解き放たれた魂たちの、静かな解放だった。
最後の怨霊が浄化されると、花凜は少しふらつきながらも両手を天に向けた。
「清真さま……私」
彼女の身体から立ち上る月光が、優しい霞のように彼女を包み込む。その姿は、月に祈りを捧げる巫女のように神聖で美しかった。
「私にできることを……大切な人たちのために」
花凜の声には一生懸命さが込められていた。背伸びをしているわけではなく、ただ真っ直ぐに自分の気持ちを表現している。
彼女の体から放たれる光が強まり、神殿全体を温かく包み込んだ。
月光の柱が天に向かって立ち上がり、神殿を柔らかな光で満たした。破壊された封印が、その光を浴びて、ひび割れた結界に新たな力が吹き込まれていった。
程なくして、孝斗皇子が姿を現した。神殿の入り口に馬蹄の音が響く。帝都警備隊に護られた紫色の狩衣の姿。
皇子は、儀式会場の封印破壊の報告を受け、清真の身を案じて急ぎ駆けつけた。最悪の事態を想定していた彼の表情には緊張が走っていた。
しかし神殿に足を踏み入れた瞬間、皇子の瞳は驚きに見開かれた。破壊されたはずの封印には怨霊の姿はどこにもなく、月光が神殿全体を神々しく包んでいた。
「これが、真の月詠み師の力か」
孝斗皇子が感嘆の声を上げた。彼の瞳には、深い畏敬の念が浮かんでいた。
「素晴らしいです、姫さま」
白猫のユキが感動で潤んだ瞳を向ける。その白い毛並みが花凜の月光を受けて、虹色に輝いていた。
天狼が誇らしげに頷いた。その巨大な白色の体は、清真と花凜の間に立ち、二人を守るように背を向けていた。
「我が主と花凜さまの勝利だな」
「さすが姫ちゃんだぜ」
地狼が尻尾を振って喜んでいる。黒い毛並みが月光で浮かび上がり、彼の喜びが体全体で表現されていた。
「まあ、悪くない。合格点はやろう」
クロだけは相変わらずツンデレだった。だがその瞳には確かな認証の光があった。彼の額の第三の目が、花凜の未来を見通したかのように輝いていた。
花凜の体から放たれる月光は、甘い香りを伴い、触れる者の心を清める神秘的な力を持っていた。
式神たちも、次々と空を見上げる。彼らの瞳には、清真とそしてもう一人の『新たな主』への忠誠が宿っていた。
神殿内に満ちていた怨霊たちが光となって消えていくと、静寂が訪れた。
避難誘導をしていた警察隊の隊員たちが、剣を構えたまま呆然と立ち尽くしている。彼らの顔には、何が起こったのか理解しきれない驚きが浮かんでいた。
怨霊と戦っていた陰陽師たちも、術式を解いたまま動きを止めている。彼らの瞳には、自分たちが為し得なかった浄化を目の当たりにした驚きの表情があった。
民衆たちは、つい先ほどまで逃げ惑っていたことが嘘のように、ゆっくりと顔を上げ始めた。恐怖に歪んでいた表情が、安堵へと変わっていく。
そして彼らの視線が、月光に包まれた花凜の姿に注がれた。花凜を見る目が、完全に変わっていた。先ほどまでの疑惑の眼差しは消え、代わりに深い尊敬の気持ちが浮かんでいる。
「あの方が、都を救ってくださった」
「月詠み師さまを疑うなんて、申し訳ないことをした」
群衆の中から感謝の声が上がり始めた。人々は清真と花凜の姿に、帝都に古くから言い伝えられる、人々を救った月の神の姿を重ね合わせていた。
清真が花凜の横に立ち、彼女の肩にそっと手を置いた。その温もりが、花凜の心に深い安らぎをもたらす。
「君はこの帝都の、そして俺の誇りだ」
清真の褒め言葉に、少女らしい恥ずかしさと嬉しさが混ざり合った表情を見せる。
「清真さま……」
花凜の声は小さく、でも幸せそうだった。彼の言葉が胸の奥で温かく響き渡る。
「私。一生懸命、頑張りました」
素直に自分の気持ちを口にする花凜。その言葉に、達成感による小さな誇らしさが込められていた。清真の瞳が、優しく微笑む。
「ああ、よくわかる。君の頑張りを、俺はずっと見ていた」
二人の間に流れる温かな空気に、周りの人々も心を和ませていた。
***
温かな感謝の声が神殿に響く中、花凜の継母の志津と義妹の乙音は呆然と立ち尽くしていた。全ての企みが失敗し、現実を受け入れることができずにいる。
志津は口をぽかんと開けたまま、何が起こったのか理解できずにいた。完璧だったはずの計画が、まるで夢のように崩れ去っている。
乙音の瞳は、憎悪から困惑へと変わっていた。その顔には信じられないという表情が浮かび、「なぜ」「どうして」という疑問符が渦巻いていた。志津も同様に、現実を受け入れられずただ茫然と立ち尽くしていた。
