「あの・・・ミーシャさま?大丈夫ですか?」

その声に、ミーシャは眠りから覚めるように思考の世界からぬけだした。

視線を転じれば、専属メイドのグレースが自身の顔を覗き込んでいた。

「先ほどからずいぶんと上の空のような気がするんですけど・・・・」

自らを心配してくれる忠義のメイドに感謝しつつ、ミーシャは何でもないと首を振ろうとして・・・・。
そこでハッと思いつく。

−グレースに子を妊娠させて、その子を皇子として送り出すのはどうかしら・・・?

思いついた案を実行すべく、ミーシャは夜ねむるとき、グレースを呼び出した。



「あの・・・なんでしょうか?粗相をしでかしてしまったのでしたら、今すぐお詫び致しますが・・・」
不安そうな顔をしているグレース。
ミーシャは、かぶりを振って言った。

「あなたにお願いがあるのですけれど。」

ミーシャは一度コクンと唾を飲み込んでから、続けた。

「あなたに皇子を産んでもらいたいんですの。」

「え?」

「私が、紅月の令嬢だから、私が子を産むと、必ずヴァンパイアの子になってしまうという話は聞いておりますわよね?だから、あなたに皇子を産んでもらえば、よろしいのではと思いまして。」

グレースは大きくひとみを見開いた。グレースはミーシャがヴァンパイアであることを知っている。
だから、後継ぎに困っていることも知っていた。
けれど、まさかこんなお願いをされるだろうとは思っていなかったのだろう。