そんな感情を持て余してしまった私は、学校が終わったら、すぐに家に帰らないようになった。
シャーロットは寮で楽しくしている。家にはいない。

だけど、両親の顔を見ることで、苦しくなる。
私がめいわくをかけてしまうんじゃないかって。

色々しらべた。なんでシャーロットは血を継がなかったのか。
いくら調べても答えはでなかった。
でも、もしかしたらシャーロットはすごくいい子だったから恵まれたのかなって思った。

もしかしたら、私が「不良品」だから血を注いじゃったんじゃないかって。
でも、両親のせいではない。お母さんがヴァンパイアだったけれど、一度もお母さんを憎んだことは無かった。
でも、シャーロットを見ることでシャーロットを羨む気持ちがふくらんでどうしようもなくなっていくような気がする。
それを思い出すから、お家に帰りたくなかった。

いつもてきとうにどこかに寄って、時間をつぶしていた。

いつも行くのは、バラ園がある公園だった。
あまり人が来ないこの場所は、1人で考え事をしたりするのにはとても適していた。

そこでオリファーと出会った。
オリファーもノエルリージュ学園に通っていた。同級生だったけれど、べつに学校での接点があったわけじゃない。
オリファーはクリアルージュ帝国という大国の第一王子だったから、私なんかが近寄っていい存在ではなかった。
なのに、話を聞いてくれた。
私の悩みもぜんぶ。私はヴァンパイアだということをオリファーに打ち明けた。

そしたら、私を恐れることも、避けることもなくて、むしろいつも一緒にいてくれるようになった。
クラスメートたちはいきなり私たちが仲良くしていたことに多少の違和感は抱いていたかもしれないけれど、何か言われた時は必ずオリファーがかばってくれた。

申し訳ないという気持ちばかり持っていた。
一時期、その気持ちからオリファーと関わることを避けていた時期もある。
けれど、そんなことはやっぱりできなくて。
必要とされたことが嬉しくて、自分が紅月の令嬢であることさえ忘れて嫁いだのだった。