ミーシャが城からぬけだしたという話を耳にした。
門番がいるから敷地外には出ていないと思うが、心配だった。

ミーシャの本性が湧き出た瞬間を見てしまって、挙句月並みな言葉しかかけられなかった自分の無力さを痛感する。
ミーシャだって、先の見えない霧の中を手探りで進むような気持ちなんだろうが、未熟な僕は励まし、慰めることができなかった。

自己嫌悪に陥りそうになっていた時、部屋のドアがノックされた。
開いたドアから顔を覗かせた青年従者は表情を崩さぬまま、言葉を紡ぐ。

「エメルフ条項がお呼びでございます。少々確認したいことがあるとのことですので、速急に部屋にむかって下さいますように。」