「ミーシャ、どうしたの・・・?顔を見せて?」

「いやっ・・・本当に見ないで・・・?私は・・・人間じゃあ、無いのよ・・・?」

そう言って、ミーシャは恐々(こわごわ)とした手つきでふとんをめくる。
現れたのは、血の気の無い真っ白い肌なのに、くちびるはまるで血がそのまま通っているかのように真っ赤で、真紅色とはこのような色を言うのだろう。

そして、背中に落ちた黒い影。まるで翼のような形だった。

ミーシャが紅月の令嬢で、半分はヴァンパイアの血が通っていることを知っていた。
だから、もしかしたらヴァンパイアの血が色濃く出てしまう時があることも。
ジュテームをあげることが必要だということも。

けれど。
知らなかった。こんな姿になるなんて。

こんなに君が。

・・・苦しんでいるなんて。

「・・・・・・・・・・ごめんなさい。」

ぽつりと放たれた言葉は微かに震えているし、涙混じりだった。

「なんで、謝るの・・・?」


「私はこんなにも迷惑をかけてしまっている。バレるのは時間の問題だし、そもそも紅月の令嬢が皇妃だなんて、帝国民に申し訳なさすぎて・・・」

「そんなことないよ!」

もっと慰めて上げたいのに、月並みな言葉しか出てこない自分のボキャブラリーの無さを呪いつつ、ミーシャの背中を撫でる。