「っう・・・・・・・」

抑えていても、辛さに声がこぼれ落ちた。

吐き気と、めまい、意識を失うことしか症状がなかった。
なのに。

夜が深まるにつれ、体の中が燃え上がるように熱に燃え、自身が高熱を出していることがわかった。

(きっと、これは・・・つわりなんかじゃない)

わかった。はっきりと体が感じた。

紅月の令嬢は、子供ができる時、体の中で激しい「紅い血の共鳴」をおこす。
ヴァンパイアとしての力がお互いぶつかり合い、どんどんミーシャの体力を削って行った。

ミーシャの体は、それに耐える器としては小さすぎた。

「っく!」

よろよろと立ち上がり、鏡に映った自分の姿は、「本性」が混じっていた。

深い赤色だった目には、少しだけの金色が混じり、黒髪は更に黒々と光り、さらに小さいけれど牙が見えた。
そして、背中のあたりには、まるで(つばさ)のように黒い影が落ちていた。

(どうしよう・・・・)

紅月の令嬢だとしても、なんとかなると思っていた。
隠し切れると思った。本性が発覚するなんてこと、ないと思っていた。

けれど違った。