ふつうのヴァンパイアの場合、受け継ぐかどうかは2分の1の確率だ。
でも、紅月の令嬢となれば話は変わってくる。

紅月の令嬢はヴァンパイアの中でも最上級。
どんな人と縁をむすぼうが、色濃く遺伝子は出てしまう。

それに、紅月の令嬢の子供は、男だろうが女だろうが容姿が決まってしまうのだ。

夜空の闇を溶かし込んだかのような漆黒(しっこく)の髪。
赤々と燃えるかのようなルビーのように深い赤色の瞳。
色白な(つや)やかな肌。

ミーシャもそれらを持ち合わせていた。
一見すれば、妖艶で可愛らしい少女に見えるが、その身に纏う雰囲気は、この世が持つものではなかった。

ミーシャの実家は、ジュテーム家だった。
ジュテーム家は、代々紅月の令嬢を産む公爵家だった。
その事実は(おおやけ)にはされていないけれど。

だが、オリファーはそれを知っていた。
そして、ミーシャがヴァンパイアということを知りつつ話してくれたのだ。


一部の貴族の家には情報が漏洩しているらしい。
だから、もしかしたら皇子のために入ってくるであろう新しい従者がその情報を知っている人かもしれない。。
そしたら、ミーシャの正体は呆気なくバレてしまうのだ。

幼い頃から、ミーシャはその正体を隠すように教育されてきた。
だから、ずっと隠し通してきた。自己紹介の時に家名を言う時は、いつだって緊張していた。
心臓がドキドキと高鳴り、緊張した面持ちで自己紹介をしていたのだから、好感度はあまり良くないと思う。

一部の漏洩した情報。
それは、たぶん、妹がバラしたのだと思う。