「皇妃殿下！」

ミーシャに駆け寄った者たちは、ミーシャの顔色を見て絶句する。

色白の肌は、ありえないほどに青白かった。
なのに、くちびるだけは血のように深い真紅色だった。

わずかに見えたドレスの縫い目からのぞいた、少しだけふくらんだ腹部。
それを見て、晩餐会を仕切っていた伯爵は、震える声で言った。

「皇妃殿下は・・妊娠しておられる・・？」

その声に反応した人々は、口々につぶやきだした。

「まさか、最近ハニールレオ皇子殿下をご出産なされたばかりではないか。」
「けれど、あのふくらみ、間違いない。」
「皇妃殿下はあの出産は偽りだと言うのか・・・？」

混乱した人々は、皇帝であるオリファーの方を見つめた。

「陛下、皇妃殿下は妊娠しておられる。誰の子だ」

「ミーシャの子だ。間違いない。」

「陛下の血は通っているのだろうか？」

「私の子だ。何か不審でもあるか。」

「だが、皇妃殿下はご出産されたばかりではありませんか。ハニールレオ殿下をホンモノの皇子とするつもりで、ハニールレオ殿下は偽りなのではないか、そして、今皇妃殿下がご懐妊されている子は・・・隠し子ではないでしょうか？」

めざとい伯爵はそう言葉を紡ぐ。