グレースは、城の奥、ミーシャの部屋のベッドの、天蓋で身を隠し、静かに月日を重ねていった。

やがて、淡いピンク色の花が咲き誇る頃から、雪がしんしんと降り積もる頃になった。
穏やかな昼下がり。運命的な皇子の出産は、執り行われた。

ミーシャはずっと、医者を部屋に入れなかった。時には医者に嘘を吐いては、自身が妊娠をしていないことを隠していた。

グレースは、激しい痛みに身悶えていた。
真っ白なカーテンの中、グレースと一緒に入る。

周りは、もちろんミーシャが出産していると思っている。

「ミーシャさまっ・・・本当に、だいじょうぶでしょうか?」

「ええ、医者には入らないように指示しておきましたし・・・絶対に大丈夫。」

ミーシャは不安な気持ちを心の奥底に押し込めて言った。



出産は長引いた。辛そうにしているグレースを励まし、慰めながら・・・
やがて、赤ちゃんは産まれた。

ミーシャはすぐにその赤ん坊を抱き上げる。
が、赤ん坊は、小さく泣いていたのをぴたりとやめ、しゃっくりを始めた。

泣かない。どうして・・・・?

まさか、ミーシャが母親でないことに気づいている・・・!?