「グレース、ごめんなさいね。こんなことを、してしまって・・・。貴女も本当の愛する人との子を産み、自分の手で育てたかっただろうに。」

罪悪感は、グレースに対してもある。
自分が命をかけて産んだ子供は、ミーシャやオリファー、感情のこもらない気持ちで従者たちに世話され、育てられるのだ。
自分の手で育てたいに決まっている。

グレースは、一度迷うような表情を見せ、一度、口を開きかけてから、閉じて・・。
何かを躊躇うような気持ちを見せたあと、意を決したかのように言った。

「ミーシャさま、私のことは心配しないでください。大丈夫ですから。」

笑っている。いつも通りの、穏やかな笑み。柔らかい笑み。
・・・そして、それは全ての感情を呑み込み、真っ新にした笑み。


辛いのは、自分だけじゃない。グレースだって、辛いのだから・・・。

「グレース、貴女はお仕事よりも、自分の体を大切にしてね。無理しないようにしてくださいまし。」

気遣う言葉を並べてみるも、その中身が薄っぺらいことは自分でも分かっていた。
とりあえず笑みを浮かべてみるも、ほおのあたりがピクピクしている気がする。
作り笑顔ってことはバレバレだと思う。