グレースに伝えるように指示をしてから、一時間も経たないうちにそれは国へ知れ渡った。

きっと騒めいているであろう街の方を見つめながら、ミーシャはオリファーに言った。

「うまく行きそうね。」

「・・そうだね。」

オリファーの言葉は、どこか硬かった。

「どうしたの?」

尋ねると、オリファーは少しだけ震えた声で言った。

「いや、こんなことをしたら、君が傷つくんじゃないかって。それに、こんなことをしていて・・・君はいいのかなって。だって、今からすることは、帝国に、皇妃だけでなく皇帝の血さえ通っていない“偽りの皇子”を送り出そうとしてるんだろう?」

「・・・・」

その言葉は確かに的を射ていた。
この行為に、ミーシャだって罪悪感がないわけじゃない。

でも、ゆるい気持ちでヴァンパイアにも関わらず帝国皇妃として嫁いでしまったこと。
それの代償だと、分かっていたから・・・・。
いくら、心が痛んだって、叫んだって・・・。
これはぜんぶ自分のせいだし、自分が軽い気持ちでいたせいだから。

「これで、いいの・・・。」

この計画はきっと、バレる。
けれど、例え自分が国から追放されたって、紅月の令嬢であるのに嫁いだことがいけなかったのだと、割り切ることが運命なのだと、そう思うしかない。