「不安なの?」

その真剣な瞳にどきりとして、思わず顔を背けて、そっけない返事をしてしまった。

「不安なわけないではありませんの。ふつうですわ。私は、いたってふつう。放っておいて結構ですわ」

助けが一番必要な時に、一番、心がジュテームを欲している時に言えないのは、いつものことだった。

「全く、強がりなんだから。」少しだけ笑みを含んだ声で言うと、オリファーは安心させるように言った。

「だいじょうぶ。もしバレたとしたら、僕がなんとか弁解するし。ね?だから、ミーシャはなにも心配しなくてもいいんだよ?」

本当は、そんなわけない。バレたら弁解してくれるなんて、そんな1人の力でできることではない。
でも、たとえ嘘でもその言葉はミーシャの心を落ち着けるのには充分だった。

「・・・ありがとう。心配してくださいまして。」

ぽわっと暖かいものが胸に弾けていくような気がした。

「オリファーがいて、よかった」

思わずつぶやいた瞬間、くちびるに温かい感触がした。

すぐに口付けされたのだと気づく。不意打ちキスは私の体を温めた。

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「はぁ・・・」

計画は静かに始動しはじめていた。
グレースのお腹には(すで)に子供が宿っていたと聞いた。

「ミーシャさま、世間には皇子を皇妃が懐妊したといつ伝えるのでしょうか。」

「そう、ね・・・」

投げかけられた質問。ミーシャは言った。

「もう大っぴらにしてしまったいいわ。医師は入らないようにと伝えておきなさい。」

グレースに指示を飛ばし、ふっと息を吐いてベッドの上に座った。