*第一章*

ぱちんと泡が弾けるように頭の中が真っ白になった。

赤々と燃えてしまいそうな紅月の力(秘められしパワー)を抑えながら、クリアルージュ帝国の皇妃、ミーシャ・リルア・クリアルージュはもう一度問うた。

「え、お世継ぎを産む・・・?」

「はい、(よわい)16となればそろそろ適齢期かと思われます。クリアルージュ帝国の皇妃として世継ぎを産むのは使命にも近いもの。お考えくださいませ。」

いつも通りの涼しげな笑みを浮かべながら、初老の従者の女性はゆっくりと言葉を紡ぎ、深く一礼して去っていった。

ミーシャは真っ白になってしまった頭の中をもう一度稼働させ、自身のつま先を見つめながら考える。

どうしたら、私が紅月の令嬢(ヴァンパイア)であることがバレずに皇子を産むことができるのだろう。
全く浮かび上がってこない。

カクンッと力がぬけそうになってしまうのを懸命に堪え、ミーシャは自らの伴侶であるオリファーの方へ向かった。