松上幸助とアイナ・サトウが初めて出会ったのは小学生の時だった。小学校五年の夏休み、幸助は祖父の松上幸三にアメリカにある研究所に連れて行かれた。すでに幸三の松上電機は世界の松上と呼ばれるほど大企業となっていて、幸三は世界各地を飛び回っていた。
第一次スマホ戦争から二年が経っており、日本の企業も世界の主要企業と技術力の調整を行う必要があった。すでに社長は退いて会長となっていたが、松上電機の顔として幸三の影響力は甚大だった。
経営の神とまで呼ばれた松上幸三も孫の前ではよきおじいちゃんだ。幸助の休みとタイミングは合うときは、一緒に連れて行き幸助に広い世界を見せてくれた。そんなおり、すでに世界のAI研究の若き第一人者であったジョージ・サトウと経営の神、松上幸三が交流を持つことになった。
すでに世界が加速し続けるAI技術にブレーキをかけようとしていたころだ。ジョージは決して技術革新を止めることに賛成の立場ではなかった。あくまで技術を扱うのは人間、その技術をどのように使うかは結局その人間の心の持ちようにある。だから技術革新そのものに制限をするのではなく、いざというとき矛を止める盾となりうる技術を同時に構築することで、技術の進歩を止めないというのがジョージの考えだった。
幸三はそんなジョージの考えに共鳴し、莫大な資本提携を結ぶだけでなく、この年下の偉大な科学者を一友人として接した。そのような中で一週間ほどジョージの家に滞在することとなり、自然と同い年のアイナと幸助は仲良くなった。
父に似てか勝気な栗色のショートカットの少女はたった一週間の交流だったが、幸助の心の大きな印象を残した。
日本に帰ってからも時々、幸助とアイナはメールを送りあう中になったが、そんなメールのやり取りも段階的にスマホが制限されていく中で段々と薄れていき、二年がたつ頃にはほとんどやり取りもなくなってしまった。
アイナとのやり取りも途絶えてさらに三年がたつ頃、日本やアメリカなどの六か国による国連の協定違反が判明、世界に一気に緊張感が走った。反対する国々が六か国の集めていたビッグデータを破壊するためハッキングを開始、その防衛のためのAIが暴走を行い、人の手を離れて核防衛システムを占拠した。
すぐさま六か国でも解除のための手続きを取るが、AIの自己防衛システムは人間のコントロールできる範囲を超え、いつ核兵器が発射されてもおかしくない緊張状態に世界は陥った。
主要国の経済活動は止まり、あらゆる科学者や技術者がその対処を迫られたが、それもうまくいかない。物理的な破壊を考え、軍を動かしたアメリカは逆にAIの防衛システムに察知され、主要基地に小型ミサイルを撃ち込まれるという結果に終わった。世界のネットワークを牛耳られた状態では軍の防衛のシステムも無効化されてしまっている。
アメリカ軍の実質的な敗退を目の当たりにして、他の国も打つ手がなくなってしまった。AIにネットワーク世界を支配され、逆に人間が言いなりになる状態は約三カ月の間続いた。これが後に言う第二次スマホ戦争である。
幸助とアイナが再会したのはこの第二次スマホ戦争の最中だ。
ジョージは以前からの独自の研究の中で、本人曰く「盾となりうる技術」を構築していた。ただその最終段階ではネットワークの活用が必要で、アメリカのそれはすでにすべてAIによって支配されている。
しかし、独自の技術やネット体系の取り入れられた日本ではかろうじて使えるネットワークが残っており、松上電機の松上幸三と大学の博士課程時代に共に学んだハル・カンザキを頼りにジョージは日本にやってきた。
学生時代からジョージ・サトウと並び称されるハル・カンザキは大学卒業後、父の故郷である日本に戻って研究を進めた。国連の協定違反で今回問題となったビッグデータのシステムの構築にも関わっていたが、数年前から改革党の技術顧問を務め、改革党の母体地域である大阪のベイエリアにつくられた研究室に籍を移しているとのことであった。
大坂に本社を置いている幸三もハル・カンザキと面識はあったので話は早かった。幸三を通じてハル・カンザキとも再会を果たし、ハルの研究室でAIの自己防衛システムを無効化するための研究を始めた。
ジョージら父娘は松上家に居候させてもらうことになったが、実際には父のジョージはハルと研究室に籠りっぱなしだったので、松上家に世話になっているのはアイナのみといっても過言ではなかった。
もっとも幸助の方も例の第二次スマホ戦争の混乱で父や祖父は忙しくいつも家を空けているし、学校は休校で自宅待機が続いているので缶詰状態が続いている。
学校の友人との通信手段も途絶えているので話し相手と言えばアイナぐらいのものだ。五年振りなので始めこそ、お互いによそよそしかったがすぐに昔のように打ち解けた。ショートカットだった髪型は肩口までの伸び、五年前より女性らしさを感じるようになった。
ジョージの娘というだけあって、聡明なアイナとの会話は幸助にとってもよい刺激となった。おかげで自宅待機の退屈さも全く感じていない。
アイナが松上家に来て三週間が経った。その日朝からずいぶんと上機嫌だったアイナから幸助はジョージたちの研究の進捗状況を聞いた。
「……ANS?」
「そう、アンチ・ネットワーク・システムの頭文字。昨日、父から完成のめどが立ったって連絡があったの」
聞きなれない言葉に首をひねる幸助に対してアイナの口調は興奮気味だ。
「連絡って、例の携帯電話?」
「うん、この携帯もまさか今ごろ陽の目を見るなんて思ってなかったでしょうね」
アイナが手に持ってパカパカと開いたり閉じたりしているのはガラケーと呼ばれる旧式の携帯電話だ。スマホ戦争後、スマホの電波帯は制限がかかったが、日本独自で使っていた旧式の電波帯はまだ生きているものがあった。ジョージは日本に来た時にアイナにそのガラケーを連絡用にアイナに渡していた。
「アイナの携帯がつながるのはわかるけど、なんでジョージ博士のスマホは会話できるんだ?」
「父のスマホは特別だから。自動で使える電波帯を検索するの。幸助、Siroってわかる?」
「バカにすんなよ! スマホに使ってる音声認識AIだろ? 確か前のスマホ戦争のころに使われなくなった」
第一次スマホ戦争の後にAI技術の革新にはブレーキがかけられた。それまではスマホにも搭載されていた音声認識AI機能も次第に使われなくなっていった。
「さっすが、松上電機の三代目! そのSiro…父は機械っぽいのを嫌ってシロって呼んでるけど、それを研究開発のパートナーとして改良した。日常会話から複雑な計算、状況の判断までできるように改良されたプロトタイプのシロを搭載した特別製のスマホだから日本ではこのガラケーとでも話せるの。もっともまだこのガラケーの番号しか登録されていないみたいだけど」
「ふーん。とにかくすごいスマホだってことはわかったけど。それでANSって?」
元の会話からずいぶんと脱線してしまったので幸助は軌道修正しておく。思い出したようにアイナはANSについての会話を続ける。
「ネットワークを遮断する特殊な電磁波を増幅差せる装置。今までも部分的には可能な技術だったけど、ANSならそれを世界規模で行うことができるの。つまり、AIの暴走も止めることができる」
「そんなことが本当に可能なのか?」
アイナの言葉に幸助は驚く。もちろん電波を遮断する方法があることは知っているが、それを世界規模となると話は別だ。
「私も完全に原理を理解している訳じゃないけどね。最初の部分ではインターネットの力がいるみたい。ある意味ウイルスとかと一緒でネット上に妨害用のシステムを散布してしまうんだって」
アイナの説明で何となくのイメージは湧いたが、また新たな疑問が幸助には浮かぶ。
「でも、それを使うと二度とインターネット何かのネットワークは使えないってことか?」
確かにスマホ戦争以来、AIやネットワークの技術は制限されていたが、完全になくなったわけではない。だがANSとやらを完成させたら二度とそういったネットワークを使えなくなるということではと幸助は心配した。
技術の進歩は人類の進歩……祖父の松上幸三の言葉だ。現在の技術の進歩に制限をかけるやり方が本当に正しいとは幸助は思っていなかった。
「それは大丈夫。『技術を扱うのはあくまで人間の心持ち次第。技術自体に善も悪もない』父がよく言っている言葉よ。あくまでANSは盾となる技術、みんなを守るための技術。一度発動しても数年以内には妨害効果も自然となくなる」
技術自体には善も悪もない。
その言葉を口にしたアイナはどこか誇らしげだ。幸助にとっても胸にスッと落ちる言葉だった。どこか祖父の幸三とも共通するジョージの言葉に幸助も勇気づけられた。
「そっか、それじゃあ早く上手いこといくといいな」
「うん、戦争なんてすぐ終わらせないとね」
そう言って微笑むアイナの姿に一瞬、幸助は見とれてしまった。
だが悲劇はその翌日に起こった。
その日の朝、アイナは父からの不在着信が二件入っていたことに気づいた。あまりこの時間に父から電話がかかってくることはないので、不審に思いながらも折り返しをかけてみる。何度か時間を置いてかけなおすが、電源が入っていないか電波の届かないところにいるというアナウンスが聞こえてくる。こんなことは今までなかった。
最適な電波帯を検索するジョージのスマホが圏外になっていることは今回が初めてだ。充電についても予備のバッテリーぐらいは持っているはずだ。可能性としては自分自身でスマホの電源を切ったことが考えられる。
……でも、何のため? アイナの思考はそこで行き止まる。何か不吉な予感がした。
なんとなく落ち着かない一日を部屋に籠って過ごしていたアイナの元に幸助が慌てた様子でやってきた。部屋の扉を叩きながら早口で何かを伝えるがよく聞き取れない。
「アイナ、電話! 固定電話の方にかかっている! ジョージ博士が事故にあったって!」
ドアを開けて聞こえてきた言葉にアイナの頭は真っ白になる。
幸助に案内されて松上家の固定電話の子機に耳を当てる。電話の主は松上幸三だった。アイナに落ち着いて聞くようにたしなめる幸三の声もうまく頭に残らない。「はい」と「わかりました」を無表情のまま繰り返すアイナを幸助は心配そうに眺める。
「じいちゃんは何て?」
電話を切った後も放心状態のアイナに幸助は呼びかける。第一報でジョージ博士の車が事故にあったということは聞いたが、それ以上の詳しいことはわからない。
「父が事故で……危ない状態だって。タンクローリーが突っ込んできて……」
「アイナ! しっかりしろ! それで病院は聞いたのか?」
放心状態のアイナを揺さぶり、話の続きを聞く。アイナがボソッと「……松上記念病院」とこぼしたので、幸助は「松上記念病院だな」と念を押し、すぐにタクシーを手配して向かう準備を行った。
異国の地で急に事故だと言われてもアイナはどうしてよいかわからない。幸助がアイナの分も頭脳となって、今やるべき行動を素早くとった。病院に連絡を入れ、松上記念病院で間違いないことを確かめると二人ですぐさま病院へ向かう。タクシーの中で震えているアイナに幸助はずっと励ましの言葉をかけ続けた。
幸助もジョージ博士の無事を祈った。それはもちろんジョージ博士本人のためであると同時に隣で震えているアイナのためでもあった。
先に連絡を入れていたので、幸三の秘書が病院ですでに待ち受けていて、迷うことはなかった。秘書によると幸三も先に到着してICUにいるらしい。病院の中であることも構わずに幸助とアイナは走ってICUの方に向かっていった。
ICUのドアの前のベンチには幸三と何人かの松上電機の幹部が座っていた。幸助は幸三の姿を見かけるとすぐさまその前まで駆け寄った。
「じいちゃん! 博士は?」
肩で息をしながら幸助は幸三に尋ねる。幸三は一度合わせた視線を幸助から落とすとだまって首を振った。幸助は目の前が灰色になるような感覚がした。幸助が恐る恐る振り返るより早く、アイナは「嘘よ」と言いながら扉の中に入っていこうとした。
「いかん! アイナ!」
幸三が叫ぶがその制止を振り切ってアイナはICUの中に入る。幸助がつかもうとした手もすり抜ける。
「アイナ!」
あわてて幸助もアイナに続いてICUの中に入る。
「なっ……⁉」
そこで見たものの衝撃に思わず言葉を失う。一瞬、遅れてアイナの叫び声が響く。アイナ自身もそれが何なのかすぐには認識できなかった。両手で髪の毛を掴み、発狂しているアイナの頭を幸助は自分の体に抱き寄せて、そこから視線を外させる。アイナの体の震えが直接、幸助にも伝わった。
黒く焼け焦げた塊はそれがジョージ・サトウだとは認識できないほど損傷していた。特に上半身の損傷はひどく、爆発に巻き込まれたのか肩口は肉がはじけて、えぐり取られていた。そこで行われていたのはすでに治療ではなく、遺体を運び出すために布でくるむ作業だった。幸助とアイナが目撃したのはその場面だった。
「ジョージの車がぶつかったタンクローリーがそのまま引火してな……現場はひどいありさまだったよ。ここに運ばれてきた時にはもう手遅れだった」
幸三もICUの中に入ってきて幸助が抱きしめているアイナの背中に語った。
「本当に優秀な技術者だった。昨日の夜、最後に会った時も完成したANSの理論を話してくれた。いよいよそれを実行する段階だったのに」
幸三の声も聞こえているだろうが、アイナは幸助の腕の中でただ泣き叫ぶばかりだった。幸助はこんな時にANSの話をする祖父に少し苛立った。だが幸三にとっては今だからこそANSの話をしておく必要があった。
「アイナ、そのままでいいから聞いてくれ。私は何としてもジョージの無念を晴らしたい。この混とんとした世界を救う光が見えたんだ。彼がやり遂げられなかったANSの完成を見届けたいと思う。ジョージの親友だったハル・カンザキも、改革党も全面的に協力してくれると言ってくれている。必ずANSの完成した姿を、もう一度秩序を取り戻した世界をジョージの手向けとすると約束しよう。だから……君も辛いと思うが少しずつでいいから前を向くんだ。きっとジョージもそう願っている」
幸三の言葉も今のアイナには届かなかった。幸助に抱えられながらアイナはICUを後にした。その背中を見送りながら幸三はそっと涙を流した。
アイナがしばらくふさぎ込んでいる間に世の中は大きく動いていた。ANSの完成によりAIによる核の占拠は解かれ、すぐさま世界各国の首脳が集まり今後のことについて話し合いが持たれた。
ANSの使用をした日本政府が主導し、第一次スマホ戦争時よりさらに厳しい技術の制限を提言した。前回はすべての国が順守することができなかった技術の制限も、実際にAIの防衛システムの暴走を経験した後では反対する国はなかった。
すでに世界はANSの影響で既存のネットワークの大部分が使えなくなっている。各国首脳の決定とANS、そしてジョージ・サトウの名が世界中に知れ渡るのは、昔ながらの新聞を使ってだったので少し時間がかかった。
実際に最終的なANSの運用を行ったハル・カンザキの名前が表に出ることはなかった。世界ではANSの完成と共に事故死を遂げたという物語性もあってジョージ・サトウを英雄として扱った。閉塞した世の中で人々のジョージ・サトウ像は現実と乖離していった。
「技術を扱うのはあくまで人間の心持ち次第。技術自体に善も悪もない」というジョージの信念とは裏腹にジョージ・サトウの存在が反技術社会の先鋒のように扱われるのが、アイナからジョージの真意を聞いた幸助には許せなかった。
ANSの完成には少なからず幸三も関わっている。祖父の幸三は世界のこういった動きをいったいどう思っているのか一度聞いてみたいと幸助は思っていた。技術の力で人々の暮らしをよりよくしていこうとしてきた松上電機の会長はこれからの世界にどのようなビジョンを描いているのか幸助は知りたかった。
しかし、あれから幸三はずっと忙しくしていて、なかなか幸助は祖父と話す機会を持つことはできなかった。幸助が話す機会を取れなかったのは祖父だけではない。同じ家に住んでいるもののアイナともあれ以来ゆっくりと話をすることができなかった。
アイナ自身がふさぎ込んでいて、幸助の方から話しかけづらいこともあったが、ここ数日は幸三の秘書に連れられて日中は出かけていることも理由の一つだった。
アイナの母はすでに他界しており、ジョージがアイナにとっての唯一の家族だった。幸三はアイナを引き取るつもりもあったが、アイナは自分の身の振り方を考える暇などなく、ジョージを弔ったり、諸々の手続きで精一杯だった。
幸助が久々にアイナと会話を交わしたのは、幸助が出かけようとするところにジョージの荷物の引き渡しから帰ってきたアイナとちょうど玄関で鉢合わせたときだった。
「アイナ、最近はどうだ? 少しは眠れるようになったか?」
ジョージの死からふさぎ込んでいたアイナは見るからにやつれていった。最初の頃には目の下に大きな隈と眼を赤くはらしていたが、今日は幾分かましに見える。
「うん……ありがと。元気とは言えないけど少しずつ受け入れようとはしている。今日も父の荷物を引き取りに行ってたんだ」
「そうか」
「そうとう大きな爆発だったみたいで形見って言えるものも少ないんだけど、ほら……」
アイナはレンズが片方取れ、フレームが歪んだメガネを袋から取り出した。
「父の眼鏡。現場付近に落ちていたのを警察が拾ってくれたんだって。父のスマホも聞いてみたんだけどそれは結局見つからなかった」
「スマホって例の改良されたSiroの?」
「うん、研究のパートナーだったシロに聞けば、父の研究のことも少しはわかるかなって思ったけど……それに」
「それに?」
「ううん……何でもない」
アイナは何かを言いかけて止めた。幸助もその続きの言葉が気になったが、今はあまり深く掘り下げる時ではないと思い素直に引き下がった。そのときアイナが何を言おうとしていたのか、後から幸助は知ることになるが、しばらくはそんな会話があったことすら幸助は忘れてしまっていた。
それぐらい幸助にとっても時代は大きく動いていて、ANSの発動は今までの常識が一つずつ変わってく大きな転換点となっていた。
その後、アイナはすでに亡くなった母の妹のところに身を寄せることになった。幸三はアイナを養女に迎えるという話を正式に行ったがアイナはそれを固辞した。アイナの引き取り先が決まってから話はとんとん拍子に進み、幸助はアイナとゆっくりと話す間もなく別れの日を迎えた。
インターネットもスマホもない世界で遠く離れたアイナと人生が再び交わることはないのかもしれないと幸助はあきらめかけていた。大学を出て幸助は松上電機に入社し、幸三の会長室に配属された。幸三に経営の何たるかを仕込まれたが、すでに技術革新を止めてしまったネオライフと呼ばれる世界の中で電機産業の進むべき道を見いだせないでいた。
社長である幸助の父は割り切って、ネオライフなりの電機産業の姿を模索していたが、幸助にとってそれはただ守りに入る退屈な日々だった。そんな中でアイナの記憶も少しずつ薄れていった。
そんな幸助がアイナと再び出会ったのはNL15年、幸助とアイナが三十一歳になるときのことだった。



