手を繋いだ夢を見た。
隣の病室の男の子と、二人きりで晴れた日の病院の廊下を駆け回る夢。
周りには誰もいない。
わたしたちは無人の病院を燥いで駆け巡り、そのたびにどうでもいいことで一喜一憂する。

『――晴花、ありがとう』

ふと、男の子が笑顔のまま、そうつぶやいた。

『――ありがとう、最期まで。最期の後も、僕と一緒にいてくれて』

理不尽な現実にさらされてきた。
目の前が真っ黒になるような別れも迎えた。
君と過ごした思い出は、もう遠いあの春の中。
その中には、わたしたちがやりたかったこと。
やり残したこと、たくさんある。
それでも……。
その全てを経て今、わたしたちはこうして笑えている。
わたしたちはこの瞬間、確かに幸せだった。
確かに、幸せだったのだ。