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「花京院様、よろしいでしょうか?」
「ん?君は?」
花京院の当主に声を掛ける。
「私は汐倉妃月と申します」
「汐倉…汐倉…ああ、うちの父の親友の!」
花京院当主は思いだしたとポンと手を叩くと妃月は笑う。
「孫娘かい?お孫さんの話は聞いたことなかったな〜」
「はい」
花京院当主の気さくな話し方に手応えを感じていた。多少は心を開いてくれれば入り込みやすいからだ。

「お隣の殿方はご子息でいらっしゃいますか?」「そうだよ。ほら、汐倉のお爺様とうちのお爺様は仲がいいんだ。父さんも世話になったんだよ。挨拶しなさい」
妃月は花京院の子息に会釈。
「ども、花京院頼朝《かきょういんよりとも》です」
(やったわ!まずは接触成功!なかなかイケメンじゃない)

「頼朝は16歳でね、妃月さんと同じくらいかな」「私は18歳ですわ」
(年下…私は年上のアダルトな色気のある殿方がタイプなんだけど…まぁ、2歳くらいならいいわ。将来有望そうだし〜)

頼朝は178センチの長身でサラサラヘアー。
まだ少年と大人の狭間という顔のちょっとタレ目なイケメン。

「年齢も近いしうちの頼朝とどう?」
「はいっ、ぜひっ!」
(き、きたわあああっ!!花京院の跡取り息子ゲットよおおっ!)
表情には出さないが歓喜で笑い転げそうだった。父親である花京院当主からの申し出だ。決まったも当然だと思っていた。

「……18ってババアかよ。おい、ババア。てめぇの汚ねぇ欲望、隠しきれてねぇぞ。金と地位目当てのババアとなんか御免だ。消えろブス」
頼朝の蔑むような目にフリーズする妃月。

「こらっ。失礼だから」
「いや、事実だし。親父だって恋人も伴侶も見定めろって言ってんじゃんか」
「それは…。す、すまないね〜……」
「いいえ。とても個性的な御方ですわ」
申し訳なさそうにする花京院当主。
頼朝は「はよ、消えろ」と言わんばかりにシッシッと追い払おうとする。
「ご挨拶だけですので、私はこれで失礼しますわ」
一時退却するしかないと考え立ち去る。

妃月は歯をギリギリと歯ぎしりして内心、腹が立っていた。
(なによあの態度!私がブスですって!目ついてないんじゃないの、あのクソ餓鬼!…今日は挨拶しただけで充分。私の虜にしてあげてよ)
心の中ではかなり口が悪くなる妃月。
妃月は頼朝が長男だと勘違いし野心を燃やすのだった。