「こんな汚い物をお見せしてしまって…申し訳ございません」
「……いいえ。さ、頼久様と頼朝様が待っておりますから急ぎましよう」
申し訳なさそうに謝る椿に左京はフッと微笑む。

「私、ちょっとお手洗いに……」
「ではお供します」
「一人で大丈夫です。お先に行っていただけますか?」
「わかりました」
左京は一礼し先にリビングに行った。
椿は何度もため息をつく。
(頼久様は由緒ある家柄の高貴なお方。私みたいな元は庶民なんか合うわけない。妃月様こそお似合いなんだ……)


リビングでは椿を待つ頼久と頼朝。
頼久は和服、頼朝はブランドロゴのシャツでラフな姿。
「なぁ。マジであの事故物件ブスを妻にするとか言ってんの?まだ付き合って数日程度なのに冷静に考えろよ」
「本気だが?未来の義姉に事故物件とは失礼だ」
「あの声を掛けてきた自信過剰なメス豚、兄貴の顔と地位にしか興味なさそうだし、どうせ親も寄生虫のように利用するぞ」
たしかに椿とは正反対の女だったなと思う反面、先程の妃月のことや昨晩のことといい、不可解な点は気になっていた頼久。
頼朝も椿の様子が気になっているようだ。

「失礼致します、頼久様…少しよろしいですか?」
「ん?ああ、構わない」
左京が近づき、頼久たちに聞こえるくらいの小声で椿の痣のことを話した。
頼久と頼朝の顔は険しくなった。