水仙と椿

きゃあきゃあと朝から黄色い声が湧き立つ。
その理由は頼久と頼朝。

椿は早朝、頼久の屋敷から学校に向かおうとすると左京に止められた。
車通学が当たり前のお嬢様学校にいつも徒歩通学で、頼久の屋敷からだと学校が遠くなるから今から出ないと間に合わないと正直に答える椿に左京は驚き、頼久を叩き起こした。

頼久から車で送るからゆっくりしろと説得され、頼久、頼朝と同じ車に乗り送ってもらった。
椿が降りると頼久も一緒に降り、校門前まで歩く。
頼久と車の窓から見える頼朝に女子生徒たちは釘付けだ。
頼久は椿に夢中で女子生徒の声など聞こえていないような振る舞いで頼朝は不機嫌に悪態をつく。

「帰りも迎えに来るから待っていてくれ。椿、今日も一日頑張れ」
「はいっ。頼朝様も楽しい日になりますように」
名残り惜しそうに手を振った。
教室に入るとまともに話したことがないクラスメイトたちからあれは誰だと質問責めにあっていた。


「妃月様、おはようございます」
「あら、おはようございます」
ニッコリと微笑みクラスメイトの女子生徒と挨拶。
「妃月様の妹さん、ご婚約でもされたのですか?」「え?」
遅めに登校した妃月にはなぜ学校内の学年の違うにも関わらず、そんな話しをするのがわからなかった。話しによるとどうやら椿と頼久が一緒だったらしく椿をエスコートする王子様のようだったと頬を染めながら教えてくれた。
「…あれは……」
否定しようと口を開くと他の女子生徒が口を出す。
「あの方、花京院家の方ですわよね。たしか…ご長男の頼久様。わたくし、何度かパーティーでお見掛けしましたの」
「まぁっ。妹さんが花京院様のご婚約者様なんて羨ましいですわ〜」
女子生徒たちは盛り上がり、何も言えなくなってしまい、愛想笑いで誤魔化すしかなかった。