グッと拳を握りながら椿たちが出ていくのをじっとみていた。
妃月はゆっくり怒りを抑えるとニヤッと不気味に笑う。
(花京院頼久様……どこのご子息の方でも構わなかったのだけど…まさか花京院家の方とはね。私の目は本物だったのね)
「……椿、アンタは私のお母様からお父様を誘惑した穢らわしい母親《おんな》と同じ。でも私は違うわよ、アンタを利用させてもらうわ」
そう呟く妃月。
横を見れば母親は鬼の形相で沸々と怒りがこみ上げていた。椿の母親を思い出しているのだろう。
母親をたしなめながら今夜は休むことにした。
✱✱✱✱✱✱✱✱✱
━━━━花京院家の車の中。
「ありがとうございました」
「んあ?たいしたことしてねぇスよ」
椿は運転中の右京にお礼を伝える。
「お帰りになられたのにどうしてお戻りに?キーホルダーもすぐに見つけくださいましたよね…」
椿の疑問。暗くて見つけられなかったのだが右京はすぐに見つけた。
「こいつは野生の猿だからな。動物ってのは地震とか予知するだろ?アレだ」
「頼久!誰が猿っスか!ばーかばーか!」
「子供かお前は……」
よくわからないが同級生トリオのやり取りは微笑ましい。
「ここがご自宅ですか?」
車から降りると大きな日本の屋敷。屋敷というより城じゃないかと思うほど広い敷地に大きな屋敷。
「いや、別邸だな」
頼久が椿の手をとり、ゆっくりと屋敷に入っていく。
洋室のリビングに向かった。
「左京にお茶を持ってこさせるから座ってくれ。もうここは君の家なんだから」
「はい……」
ソファーにちょこんと座る。
「おい、兄貴。誰だよこの頭の悪そうな不細工凡人女は」
声のする方に目を向けると床に人が横たわっていたようで、声の主は体を起こす。
「また床で寝てたのか。寝るなら自分の部屋で寝ろ」
「うっせーよ。で、誰だってぇの?」
頼久と少し似ている男性は椿をまるで敵のようにギロッと睨みつける。
「俺の恋人で未来の妻だ。事情があって今日からここに住む。椿、こいつは俺の弟…三男の頼朝だ。椿と同じ年で口が悪いが可愛い奴だ」
「し、汐倉椿です!今日からお世話になります」
立ち上がり頭を下げる。
「あー…あの女か」
頼朝はパーティーが終わった後、兄の頼久が走って女性をエスコートしながら送っていったのを思い出した。
「お前も花京院の…兄貴の…地位や金が目当てかよ」
「え?」
「彼女は違うからやめろ」
頼久は頼朝を睨みつける。
「フン…どうだかな。気分が悪いから自分の部屋で寝るわ」
頼朝は頼久の睨みに怯むことなく、リビングから出ていった。
「すまない…花京院と聞くと色々と甘い蜜を吸いに寄ってくる連中がいるんだ。頼朝は特にそういう連中を嫌っている。椿は俺自身を見てくれているんだろ?だから堂々としていてくれ」
頼朝に少しびっくりし悲しんだが、椿にはわからない苦労があるんだろうなと思い直した。
「失礼致します。部屋の準備が出来ました」
左京が呼びにくる。
自室となる部屋に通されると部屋は和室で優しい色使いの家具や小物ばかり。
「素敵なお部屋。本当に私なんかが使ってもよろしいのですか!」
「はい、もちろんです」
ニコッと微笑む左京は女性ながらイケメンである。
「ここに住んでいるのは俺と頼朝、左京と右京だけだからゆっくり過ごすといい。それと何かあれば左京を呼べ。女同士なら気を使わずに済むだろう」
「頼久様、本当に本当に色々とありがとうございます!」
頼久に頭を下げてお礼をする。
頼久は愛しそうに椿の髪を撫でた。
「同棲がこんな早いと思わなかったスね〜」
「ああ。お気に召していただけたようで、用意してよかったよ」
左京右京は喜ぶ椿に微笑む。
妃月はゆっくり怒りを抑えるとニヤッと不気味に笑う。
(花京院頼久様……どこのご子息の方でも構わなかったのだけど…まさか花京院家の方とはね。私の目は本物だったのね)
「……椿、アンタは私のお母様からお父様を誘惑した穢らわしい母親《おんな》と同じ。でも私は違うわよ、アンタを利用させてもらうわ」
そう呟く妃月。
横を見れば母親は鬼の形相で沸々と怒りがこみ上げていた。椿の母親を思い出しているのだろう。
母親をたしなめながら今夜は休むことにした。
✱✱✱✱✱✱✱✱✱
━━━━花京院家の車の中。
「ありがとうございました」
「んあ?たいしたことしてねぇスよ」
椿は運転中の右京にお礼を伝える。
「お帰りになられたのにどうしてお戻りに?キーホルダーもすぐに見つけくださいましたよね…」
椿の疑問。暗くて見つけられなかったのだが右京はすぐに見つけた。
「こいつは野生の猿だからな。動物ってのは地震とか予知するだろ?アレだ」
「頼久!誰が猿っスか!ばーかばーか!」
「子供かお前は……」
よくわからないが同級生トリオのやり取りは微笑ましい。
「ここがご自宅ですか?」
車から降りると大きな日本の屋敷。屋敷というより城じゃないかと思うほど広い敷地に大きな屋敷。
「いや、別邸だな」
頼久が椿の手をとり、ゆっくりと屋敷に入っていく。
洋室のリビングに向かった。
「左京にお茶を持ってこさせるから座ってくれ。もうここは君の家なんだから」
「はい……」
ソファーにちょこんと座る。
「おい、兄貴。誰だよこの頭の悪そうな不細工凡人女は」
声のする方に目を向けると床に人が横たわっていたようで、声の主は体を起こす。
「また床で寝てたのか。寝るなら自分の部屋で寝ろ」
「うっせーよ。で、誰だってぇの?」
頼久と少し似ている男性は椿をまるで敵のようにギロッと睨みつける。
「俺の恋人で未来の妻だ。事情があって今日からここに住む。椿、こいつは俺の弟…三男の頼朝だ。椿と同じ年で口が悪いが可愛い奴だ」
「し、汐倉椿です!今日からお世話になります」
立ち上がり頭を下げる。
「あー…あの女か」
頼朝はパーティーが終わった後、兄の頼久が走って女性をエスコートしながら送っていったのを思い出した。
「お前も花京院の…兄貴の…地位や金が目当てかよ」
「え?」
「彼女は違うからやめろ」
頼久は頼朝を睨みつける。
「フン…どうだかな。気分が悪いから自分の部屋で寝るわ」
頼朝は頼久の睨みに怯むことなく、リビングから出ていった。
「すまない…花京院と聞くと色々と甘い蜜を吸いに寄ってくる連中がいるんだ。頼朝は特にそういう連中を嫌っている。椿は俺自身を見てくれているんだろ?だから堂々としていてくれ」
頼朝に少しびっくりし悲しんだが、椿にはわからない苦労があるんだろうなと思い直した。
「失礼致します。部屋の準備が出来ました」
左京が呼びにくる。
自室となる部屋に通されると部屋は和室で優しい色使いの家具や小物ばかり。
「素敵なお部屋。本当に私なんかが使ってもよろしいのですか!」
「はい、もちろんです」
ニコッと微笑む左京は女性ながらイケメンである。
「ここに住んでいるのは俺と頼朝、左京と右京だけだからゆっくり過ごすといい。それと何かあれば左京を呼べ。女同士なら気を使わずに済むだろう」
「頼久様、本当に本当に色々とありがとうございます!」
頼久に頭を下げてお礼をする。
頼久は愛しそうに椿の髪を撫でた。
「同棲がこんな早いと思わなかったスね〜」
「ああ。お気に召していただけたようで、用意してよかったよ」
左京右京は喜ぶ椿に微笑む。



