水仙と椿


「うっひぃ〜やっぱ思った通りだったスね〜」
右京が中庭に現れた。
「困ります、お客さま!」
「いいじゃん!気にすんなって!」
汐倉家の使用人が慌てて追いかけるが右京は聞く耳を持たずキョロキョロしている。

「へい、お嬢様!水浴びっスか?」
「右京さん…」
椿にニッと笑いかける。
「んなわけあるか!」
右京に続き、左京も息切れしながら現れる。
「まったくお前は………っ!」
頼久もやって来ては泣く椿に駆け寄り抱きしめる。

「ほい。お嬢様の探し物っス」
「ありがとうございます」
右京からキーホルダーを受け取る。
頼久はホッとしている椿を確認し妃月たちを睨みつける。先程とは比べ物にならないほどの怒りに満ちていた。

「よ…頼久様?…お帰りになられたはずでは?」
「………戻ってきては悪いか?……俺が聞きたいのはなぜ椿が泣いているかだ。それに頬と腕が赤くなっていたぞ」
「椿とは日の浅い頼久にはご存じないのかもしれませんが、椿はドジでそそっかしいんですのよ。オホホ……」
妃月は怯み、後退る。

「左京!右京!椿の荷物を俺の屋敷に運べ」
「あいあいさー!」
「承知致しました」
左京右京は土足のまま屋敷にあがりこみ荷造りと運搬作業を始める。

「今日から椿は俺の屋敷に住まわせる。文句は言わせん。……椿も構わないな?」
妃月たちに厳しい表情をみせたが椿には優しい表情をみせる。
「…はい。お世話になります」
頼久と椿は汐倉家を後にしようとしたが、妃月は納得できなかった。

「頼久様はお見うけしたところ成人されてますわよね、椿は16歳…犯罪ですわ!」
「だからなんだ?貴様と貴様の両親を虐待と通報する。花京院の力であれば警察を動かすなど容易いことだ」
「………くっ。」
妃月はそれ以上言えず黙った。