「こちらへ」
使用人が部屋に来客を案内する。
「いらっしゃいませ」
来客にニッコリと微笑みながらお辞儀。
「夜分に失礼する」
「………っ!!」
椿と共に入ってきたのは頼久だった。
興奮をグッと抑えた。
(なぜまた椿といるの!!)
「おぶ…つ、椿が食事をご馳走になったそうでありがとうございます。私がつ…椿の母です。こちらは椿の姉の妃月ですわ」
母親は椿の名や自分の娘だと口にするのが嫌なのか眉や口元がピクピクしている。
「昨晩はどうも。また妹がご迷惑を…躾がなっておりませんで……」
妃月は頼久に挨拶しつつ、椿への皮肉を忘れない。
椿はいつもなら根暗で下を向いているはずが今日はまっすぐ母親と妃月をしっかり見ていた。
頼久は椿の母親と名乗る者をチラっと確認した。
「本日は椿さんと真剣交際のご報告へ参っただけです」
「なんですって!!頼久様、なぜ椿ごときと!」
我慢していたが聞き捨てならない。
「椿との交際は認められません。私だけではなく主人も同じ考えです」
妃月の言っていた「頼久」だと察した母親。
「妃月はどうでしようか?自慢の娘ですのよ。どこへ出しても恥ずかしくない出来た娘でして、頼久様とも並んで歩くのに相応しいほどの華がありますわ」
「はい、もちろん。頼久様の役にも立ちます」
自信満々に胸を張る妃月。
「私は椿さんと真剣交際すると申したはずですが?」
ニッコリと黒く微笑む頼久。
「でた〜キレてる時の頼久の笑顔〜怖ぇ」
「黙っとれ」
後ろに控えている左京右京がヒソヒソ話をしていた。
母親は黙ってしまった。
「茶道家として未熟で学校の成績も悪いんです。恋人なんてできたら、それらが疎かになってしまいます。その点、私は優秀ですから」
頼久にアピールしつつ、椿に圧をかける。
椿は下を向いてしまい、諦めさせられると確信した妃月。
しかし……
「俺は報告に来ただけだ。お前たちの許可など必要ない」
母親と妃月を睨みつける頼久。
頼久は椿を励ますように頭を優しく撫でる。
椿も顔をあげ、頼久に微笑み返した。
「名乗るのが忘れていたな、失礼した…。俺の名は花京院頼久。花京院家の現当主の長男だ。椿は将来の妻として迎える予定だ。家族であれ、くれぐれも丁重に扱ってくれ」
頼久は立ち上がり、椿に「またな」と言って左京右京と共に汐倉家をあとにした。
使用人が部屋に来客を案内する。
「いらっしゃいませ」
来客にニッコリと微笑みながらお辞儀。
「夜分に失礼する」
「………っ!!」
椿と共に入ってきたのは頼久だった。
興奮をグッと抑えた。
(なぜまた椿といるの!!)
「おぶ…つ、椿が食事をご馳走になったそうでありがとうございます。私がつ…椿の母です。こちらは椿の姉の妃月ですわ」
母親は椿の名や自分の娘だと口にするのが嫌なのか眉や口元がピクピクしている。
「昨晩はどうも。また妹がご迷惑を…躾がなっておりませんで……」
妃月は頼久に挨拶しつつ、椿への皮肉を忘れない。
椿はいつもなら根暗で下を向いているはずが今日はまっすぐ母親と妃月をしっかり見ていた。
頼久は椿の母親と名乗る者をチラっと確認した。
「本日は椿さんと真剣交際のご報告へ参っただけです」
「なんですって!!頼久様、なぜ椿ごときと!」
我慢していたが聞き捨てならない。
「椿との交際は認められません。私だけではなく主人も同じ考えです」
妃月の言っていた「頼久」だと察した母親。
「妃月はどうでしようか?自慢の娘ですのよ。どこへ出しても恥ずかしくない出来た娘でして、頼久様とも並んで歩くのに相応しいほどの華がありますわ」
「はい、もちろん。頼久様の役にも立ちます」
自信満々に胸を張る妃月。
「私は椿さんと真剣交際すると申したはずですが?」
ニッコリと黒く微笑む頼久。
「でた〜キレてる時の頼久の笑顔〜怖ぇ」
「黙っとれ」
後ろに控えている左京右京がヒソヒソ話をしていた。
母親は黙ってしまった。
「茶道家として未熟で学校の成績も悪いんです。恋人なんてできたら、それらが疎かになってしまいます。その点、私は優秀ですから」
頼久にアピールしつつ、椿に圧をかける。
椿は下を向いてしまい、諦めさせられると確信した妃月。
しかし……
「俺は報告に来ただけだ。お前たちの許可など必要ない」
母親と妃月を睨みつける頼久。
頼久は椿を励ますように頭を優しく撫でる。
椿も顔をあげ、頼久に微笑み返した。
「名乗るのが忘れていたな、失礼した…。俺の名は花京院頼久。花京院家の現当主の長男だ。椿は将来の妻として迎える予定だ。家族であれ、くれぐれも丁重に扱ってくれ」
頼久は立ち上がり、椿に「またな」と言って左京右京と共に汐倉家をあとにした。



