絃は、朝比奈家の屋敷の一室に案内され、そこで手当てを受けていた。
 着物で隠れていた蜂の刺し傷に、天馬がひとつひとつ薬を塗っていく。
「…あの、どうしてこの傷がわかったのですか」
「俺をだれだと思っている。どちらが重症者かくらい、ひと目でわかる。それに、だいたいの状況も把握している」
 黙々と薬を塗る天馬の美しい顔を見て、絃は思わず頬を赤く染めた。
「それにしてもひどいな…。これが妹のすることか」
「…妹とは血が繋がっておりませんし、そもそもわたしは呪血なので。ですので、血が出ている箇所はわたしが塗ります」
「呪血がなんだ。いいから俺に任せておけ」
 天馬は、黒い血にも躊躇うことなく触れる。
 それを見て、絃は今ならできるような気がした。
「あ、朝比奈…さま」
「なんだ?」
「あの、これ…。以前お借りしたもので…」
 絃は、着物の懐からそっとハンカチを取り出す。
 それを見た天馬は思わず頬を緩めた。
「わざわざ持っていてくれたのか。ありがとう」
 断られることも想定していたが、天馬はうれしそうに絃からハンカチを受け取った。
「このハンカチは、祖母の形見なんだ」
「おばあさまの!?そんな大事なものをわたしなんかの呪血で…」
「なにを言う。真っ白に洗濯してくれてありがとう。前につけてしまったケチャップのシミまで消えている」
「えっ、ケチャップ?」
「ああ、丁寧に洗ってくれたんだな。本当にありがとう」
 これまで自分なんてと思い続けてきた絃だったが、なにかをしてよかったと思ったのはこのときが初めてだった。
「さて。俺にできる限りの手当てはしたが、まだ見えないところも刺されているだろう」
「見えないところ…?」
「ああ。俺が着物を脱がせるわけにもいかないしな」
 天馬の言葉に、絃は顔を真っ赤にさせて胸元を押さえた。
 それを見て、天馬はクスクスと笑う。
「冗談だ。そんな目で見るな。あとのことは、この者に任せるから」
 天馬がそう言うと、ノックされたドアを開けてやってきたのは、小柄な年配女性だった。
「彼女は菊江(きくえ)。幼いころから俺の身の回りの世話をしてくれている朝比奈家の使用人だ」
「はじめまして、絃さま。菊江と申します。この場はどうぞ菊江にお任せください」
 柔らかい表情の菊江に、絃は自然と緊張した心がほぐれるのがわかった。
 天馬が出ていくと、絃は菊江に促され着物を脱いだ。
「…あの、わたし…背中に大きなアザがありまして…」
「かしこまりました。なるべく見ないようにいたしますね」
 菊江はやさしく声をかけると、背中に薬を塗っていった。
 治療が終わり、再び着物に着替えようとした絃だったが、なぜかさっきまで着ていた着物がなかった。
「あれ…。わたしの着物は…」
「勝手で申し訳ございません。絃さまがご着用なされていた着物は、こちらでお預かりしてお洗濯いたします」
「わざわざそんなことしていただかなくても…!それに、あれがないとわたし…」
「ですので、そのお詫びにこちらのお着物にお着替えください」
 そう言って、菊江が絃に羽織らせたのは百合の花があしらわれた着物だった。
 見るからに高価なものだということくらい、絃でもすぐにわかった。
「い、いけません…!このようなものをわたしが…」
「こちらはぼっちゃまから託されたお着物ですので、ぜひ着て差し上げてくださいまし」
「…朝比奈さまが?」
 絃はあれよあれよと着物を着せられ、せっかくだからと化粧も施された。
「実におきれいですよ、絃さま」
「そ…、そうでしょうか…」
「ええ、とっても!あとは髪ですが、少々整えさせていただいてもよろしいでしょうか。菊江、ハサミの腕には自信がありますので」
 だめと言っても聞かなさそうだったので、絃は菊江にお任せすることにした。
 伸びっぱなしだった毛先を切り揃え、鬱蒼としていた髪に梳きバサミが入る。
 そうして髪を結って、髪飾りもつけてもらうと、まるで別人のような絃の姿が鏡の中に映っていた。
「これが…、わたし?」
「ええ、そうですよ。絃さまはもともとのお顔がよろしいので、少しお化粧をするだけでこんなにも華やかになられます」
 毎日璃々子に化粧はするが、自分自身にしたことはなかった。
 鏡の自分に見入っている間に、菊江はそっと退室した。
「ピピー!」
 菊江がいなくなったタイミングを見計らって、ピーちゃんが出てきた。
 ピーちゃんもうれしいのか、絃の周りを飛んで回る。
「準備が整ったようだな」
 突然、天馬が部屋のドアが開けて入ってきたため、絃とピーちゃんは驚いてその場で固まった。
「すまない、ノックをすればよかったが…。その鳥…」
 天馬は、目をパチクリとさせてピーちゃんを凝視する。
 すると、ピーちゃんは慌てて姿を消した。
「絃…、今のは…」
「な、なんのことでしょうか?」
 絃はしどろもどろになりながらごまかす。
 そんな絃を見て、天馬はにっこりと微笑んだ。
「まさか、こんなにも早くに見つかるとは思わなかったが」
「え…?」
 絃はキョトンとして首をかしげる。
 このときの絃は、天馬の言葉となぜか愛おしそうに見つめてくるその視線の意味がわからなかった。
「絃、行こう」
「行くって、どこにですか?」
「パーティーに戻るんだ。残り少ないが、せっかくおめかししたんだからな」
「…いけません。父から、終わるまでは外で待つようにと言われていますから…」
「そんなことなど気にするな。主催者の俺が許可する。それに、皆に伝えねばならぬこともあるしな。だからいっしょにきてほしい」
 そう言われ、絃は天馬に手を引かれてパーティー会場へと連れられた。
 席を外していた天馬が戻ってきて、招待客たちは一斉に目を向ける。
 しかし、その隣には見知らぬ美女がいて会場内はざわついた。
「なんて美しいんだ。あんな方、この会場にいたか?」
「いたら絶対気づくさ!いったい、どこのご令嬢なんだ」
 絃のあまりの美しさに男性陣たちからはため息が漏れる。
 一方、令嬢たちは小言をつぶやく。
「だれなの、あの女っ。天馬さまと距離が近いのよ!!」
「そういえばさっき、天馬さまに抱えられた女がいたけれど…」
「まさか、あの貧相でみすぼらしい女が…!?そんなわけっ…」
 周囲の注目を浴びながら、絃は天馬にエスコートされる。
 そのとき、和久の横を通りすぎた。
「…い、絃さん!?」
「あっ、和久さん」
「その格好は、いったい…」
「朝比奈さまがご用意してくださったのです。ですがこんな高価のお着物、わたしには似合ってないですよね」
 ――『そんなことない』
 悔しいが、和久は心の中でつぶやいた。
 似合っていないどころか、似合いすぎていて見惚れてしまうくらい。
 すると、和久のそばにいた璃々子たちが慌てて人混みから顔を出す。
「絃!?」
「…お姉ちゃん!?なんで、そんな着物なんか…」
「ほ、本当に…あの絃なの?」
 目を疑う3人の横で、和久は不覚にも胸を射抜かれていた。
 これが、あの貧相な絃なのだろうか。
 ちょっとした化粧でここまで見違えるような原石だったなんて思いもしなかった。
 派手な格好の璃々子よりも、驚くくらい好みの女性になった絃を見て、和久はごくりと生唾を飲んだ。
 あの容姿なら、そばに置いておけば周囲への自慢にもなる。
 だが、さすがに呪血の娘とは結婚できない。
 それなら、妾にするのはどうだろうか。
 貰い手のいない呪血であれば、少し甘い言葉をささやけば簡単になびくに決まっている。
 そうしよう、それが一番いい方法だ。
 もしかしたら、美しい絃を見て同じことを考えた輩がほかにもいるかもしれない。
 行動は早いにこしたことはない。
 瞬時に自己完結に導いた和久は、ゆっくりと絃に手を伸ばす。
「絃さ――」
 すると、目にも留まらぬ速さでその腕を天馬がつかんだ。
「なにか用か?」
 天馬の鋭い瞳に睨まれ、萎縮した和久はとっさに手を引っ込めた。
「あ…、いえ。彼女はぼくと親しい間柄でして、それで――」
「親しい間柄?嘘も大概にしろ。バラ園で置き去りにしたというのにか?」
 “バラ園”というワードが突然天馬の口から飛び出し、肝が冷えた和久は途端に言葉を失った。
「絃…!お前なんかが朝比奈殿のおそばにいること自体恐れ多いことなんだぞ。立場をわきまえなさい!」
「そうよ、絃!早くこちらへ」
 秀徳と佳代子が引き離そうとするが、庇うように天馬が絃を抱き寄せる。
「悪いが、今から大事な話をさせてもらう。時間も迫っているため邪魔しないでいただきたい」
 そう言い放つと、天馬は絃を連れて壇上へと上がった。
 天馬はマイクを手に持つと、締めの挨拶を行う。
 絃はなぜここに連れてこられたのかわからないまま、天馬の後ろで緊張で固まっていた。
「今後の朝比奈家繁栄のためにも、最も強い異能力を持つ女性を花嫁として迎え入れたいと思い、本日すばらしいご令嬢の方々をお呼びした次第です」
 見合いの話にも自ら触れ、期待する令嬢たちはその続きの言葉を楽しみにする表情を浮かべる。
「あなた、最も強い異能力を持つ女性ですって!」
「ハハッ。そんなの、この中であれば璃々子が一番に決まっている」
「どうしよう!ドキドキしちゃうわっ」
 天馬の話を聞きながら、西条家の3人は盛り上がっていた。
「そこで、ここに立つ西条絃を我が妻に取ることに決めました」
 天馬はマイクを持つ手と反対側の手で絃の腕をつかむと、そのまま自分の胸へと抱き寄せた。
 招待客たちからは拍手が沸き起こる一方、一部の令嬢たちは顔を引きつらせていた。
「朝比奈さま!?…今なんと――」
「説明もなくて悪かった。だが、今はこのままでいてくれ」
 ふたりは聞かれないように小声で話す。
 それが、見つめ合って寄り添う仲睦まじい姿に周囲からは見えた。
 お開きとなり、招待客たちは会場からぞろぞろと出ていく。
 その人の流れに逆らうように、秀徳は壇上にいる天馬と絃のところへ向かう。
「朝比奈殿、絃を嫁にするとはどういうことでしょうか!」
 出席者の中で最も天馬と絃の婚約に納得していないのは、おそらく西条家の3人だ。
 佳代子と璃々子も秀徳のあとに続く。
「西条さん、なにをそんなに怒っていらっしゃるのでしょうか」
「当然でしょう!親である我々に断りもなく、絃を嫁にするだなんて」
「そうですわ、朝比奈さま!絃は正直外に出すのも恥ずかしいほどの出来損ない…。朝比奈家の嫁にふさわしいのは、次女の璃々子ですわ!」
「天馬さま、いったいどうされたのですか!?さては、姉が無理やり言い寄ってたのですね!?」
 なんとしてでも絃を花嫁候補から外したくギャーギャー騒ぐ3人に、天馬は気だるげにため息をつく。
「口々に勝手なことを話さないでいただきたい。そもそも西条さん、結婚に関してはあなた方親の許可はすでに取ってあります」
「な、なに?」
「招待状に書いていたはずです。『出席する娘は、朝比奈家と婚約の意志がある者とする』と」
 天馬の言葉に招待状の文面を思い出した秀徳は、ぐっと言葉を乗り込む。
「たしかに、そちらのお嬢さんも強い異能力をお持ちのようだが、絃と比べたら雲泥の差だ」
 これには、ここまでこらえていた璃々子もなにかがプツンと切れた。
「わたくしが、ドブ女よりも下ですって!?」
「り…璃々子…!」
「パパは黙ってて!なにがそのドブ女よりも劣っているというの!?わたくしは生粋の麗血、ドブ女は呪血。口寄せの神使だって、わたくしは4体も扱えるのよ!?」
 璃々子はこれ見よがしに、4体の神使を呼び出す。
 白銀に輝く雄鹿、華麗な白鳥、白い大蛇、無数の蜂、どれも清く気高く習得が難しいとされる神使たちだ。
「それに比べて、ドブ女の神使はあの団子鳥1羽だけでしょう!?」
「なに、絃が神使を?」
「絃!あなた、口寄せができたの!?」
 ピーちゃんの存在は璃々子に見られるまでずっと秘密にしてきたため、秀徳も佳代子も知らなかった。
「ほら、出してみなさいよ。あのブサイクな鳥を!」
 璃々子は馬鹿にするように煽ってくる。
 そんな璃々子の暴言から庇うように、絃の前に天馬が立ち塞がった。
「絃、出してみろ」
「ですが…」
 絃は一瞬迷ったが、天馬の言葉を信じることにした。
「ピーちゃん、出てきて」
 絃がやさしく声をかけると、合わせた両手の上にぽんっとピーちゃんが姿を見せた。
「なんだ、この丸々とした紅い鳥は…」
 と言いかけた秀徳だったが、すぐさま口をあんぐりと開けた。
 佳代子もなにかを察してか、同じような間抜けな顔をしている。
「パパ、ママ…、どうしたの?」
 この場の空気に一切気づいていないのは璃々子だけだった。
「璃々子、あの神使がなにかわからないの…?」
「は?ただの団子鳥でしょう?」
「それに絃のやつ…、呪式なしでどうやって口寄せを…」
「そんなの、初めから出現させて隠しておいただけでしょ?ふたりとも、なにをそんなに驚いてるの?」
 本当になにもわかっていない璃々子に、秀徳と佳代子のほうが逆に驚いていた。
「そういうことです、西条さん。そちらの娘は高度な口寄せができるかもしれないが、最低限の力もわからないのであれば、朝比奈家の嫁は務まりません」
「…だから、わたくしのどこがいけないのかちゃんと説明しな――」
「黙りなさい、璃々子!それ以上、失態をさらすんじゃない!」
 初めて秀徳に怒鳴られ、璃々子は驚いてまん丸くなった目に涙が浮かんだ。
「絃は今日からこの屋敷に住まわせます。その代わり、結納金は望む額でご用意いたします。では、失礼」
 そうして、天馬は絃を連れて3人の前から姿を消した。
 部屋に案内された絃だったが、目まぐるしい今日の出来事に頭がついていけなかった。
「詳しい話は明日するから、休むといい」
 眠れるわけなどなかったが、絃はベッドに横になって目を閉じた。

 次の日、朝食を済ませた絃を天馬は自室へと呼び出した。
 そこで絃は、今回の結婚についての説明をされた。
 朝比奈家では、当主となり妻を迎えて初めて一人前の男と見なされ、朝比奈家に代々継がれる神使と契約することを許される。
 その神使は『雷蹄(らいてい)』という名の麒麟で、雷の力により瞬時に100体もの影鬼を滅する力があるとされている。
 神使は契約者の異能者が亡くなると、契約前に封印されていたところへ戻る。
 朝比奈家前当主が亡くなってからは、雷蹄は封印石(ふういんせき)に入ったまま次期当主との契約を待っている状態なのだ。
「つまり、わたしと結婚すれば雷蹄と契約できるようになると…」
「そういうことだ」
「しかし、わざわざ急いでわたしなんかと結婚しなくてもよろしいのではないでしょうか…」
「そこは、絃の心づもりも考えないで本当に申し訳ないと思っている。しかし、俺には時間がないんだ」
 理由は、今年が『災厄の年』と言われているからだ。
 200年に一度の周期で巡ってくる災厄の年は、太陽も月も顔を出さない『闇影(あんえい)の日』と呼ばれる奇っ怪な日が1日だけ存在する。
 影鬼は暗闇から生まれるため、國の歴史上、過去に二度闇影の日が訪れ、大量発生した影鬼が人々を喰らい、討伐に挑んだ異能者さえも餌食となり、國全体に甚大な被害を及ぼしたと記録がある。
 そして、長年の太陽と月の位置関係の研究により、その日があと1ヶ月以内に迫っているということがわかった。
「だから、どうしてもそれまでに雷蹄を使いこなせるようになる必要があった」
 その天馬の話を聞いて納得した絃は、異能者の特殊な婚姻状に血で名前を記入し、天馬と夫婦となった。
「絃、振り回してしまいすまない。だが、闇影の日を過ぎ、影鬼との戦いも落ち着いたらこの婚姻関係は解消するから安心してくれ」
「…解消。それは、雷蹄との契約に必要なわたしは用済みということでしょうか」
「いや、そうじゃない。絃を縛っておくのは申し訳ないからだ。これは軍にも家族にもまだ知らせていないことだが、俺の命はもう長くはないんだ」
 天馬の突然の告白に絃は言葉を失った。
 動揺する絃の前で、天馬をおもむろに上の服を脱ぎだした。
「きゃっ…。朝比奈さま、いきなりなにを…」
「見てくれ。妻である絃には知っておいてほしい」
 手で顔を覆い恥ずかしがる絃だったが、指の隙間から天馬の体を見てはっと息を呑んだ。
 天馬の左の脇腹から上半身をはうように、禍々しい黒い紋様が現れていた。
「それは…」
「影鬼の呪印だ。討伐の際、脇腹を影鬼の爪がかすめたんだ。ケガは大したことはないが、そこから広がる呪印が体全体を覆い尽くし、いずれ俺は影鬼となる」
 絃は、影鬼の攻撃により新たな影鬼になるとは聞いてはいたが、実際にそんな人間に出会ったのは初めてだった。
「不思議なことに俺は人よりも進行が遅いようで、闇影の日まではまだ人間でいられることが幸いだ」
 命のリミットが迫っているというのに、天馬の顔は清々しかった。
「治す方法は…!?」
「それは絃でも知っているだろう。治療法はない」
「…そんなっ」
「安心しろ、まだ理性は保っている。だが、ふとしたときに血を欲する衝動があるんだ…」
 そう言って、ゆっくりと振り返った天馬の左半身はまるで鬼のような姿になりつつあった。
「大丈夫、いざとなったら腰の刀で自害する。絃は絶対に傷つけない、約束する」
 尚も気丈に振る舞う天馬を見て、絃はとっさに手を伸ばして抱きしめていた。
「…絃?どうした」
「わたしの血を吸ってください」
「はっ!?急になにを――」
「うまく説明できないのですが…。わたしの中のなにかがそう叫んでいるのです!昔、母から『あなたの血は闇に蝕まれた人々を救うことができる』と言われたことがあるのをなぜか今思い出しました…!」
 接近する絃に、天馬は思わずごくりとつばを飲む。
「しかし、わたしの血は呪血なので汚らわしいですが――」
「汚らわしいものか。お前がそこまで言うのから…、その言葉を信じよう」
 そうささやくと、天馬は半鬼化して尖った牙で絃の首筋に噛みついた。