可愛かっこいい海莉君

春、それは出会いの季節でも、別れの季節でもある。

しかし、そんななか俺、(あずま) 染里(そめや)は人生最大のピンチに立たされていた。

その原因は、この男、望月(もちずき)海莉(かいり)のせいである。


「先輩、、、あなた、こんな事ができたんですね。」


「すまないが、このことは内密に頼む、、、お願いだ。」


どうして、こんな事になったんだ〜!!

——こんなことに事になったことの発端は1時間前に遡る。






「あーずーまッ!
 お前また、女と別れたんだって!
 しかも、今回の相手は学年でも結構噂になってた3組の、愛璃(あいり)ちゃんじゃん。」


「あはははは、、、。
 ごめん相原(あいはら)、それ誰?」


「なにいってんだよ!
 お前もう忘れたのか!
 先週、告られてOKしてたじゃん。」


「そうだっけ?」


「、、、お前本当にかるいよな〜。
 後ろから刺されないように気をつけろよ。」


この、俺に話しかけてきた男は相原 (つとむ)という。

俺に男で話しかけてくれる、数少ない友人だ。

まぁ、人の恋バナが大好物という面倒くさい部分も多少あるが、良いやつだ。

そして、話を戻すと、俺はこの学校でチャラついた、女遊びが大好きな2年生のやつ。というポジションになっているらしい。

たしか、相原やクラスメイトが話したりしてるの聞いてたから多分、あってるはず。

しかし、真実はと言うと、、、全くそんなことはない。

なぜなら俺は「東〜。聞かせろよ〜。減るもんじゃないし、良いだろ?な?な?」

うるさい。

少し静かなところに行こう。


「申し訳ないけど、俺から話せることはなにもないよ。」


こおいうときには、一人になるのが一番だ。

どうせ、この感じだと1時間は根掘り葉掘り、尋問のように聞かれるだろうからな。


「おい「じゃあ、俺行くから。」わかったよ。ちぇ〜。」


よっし。それじゃあ、行きますか。俺の憩いの場へと!







タンッ、タンッ、タンッ


俺の憩いの場、それは屋上へと続く階段だ。

なぜなら、ココは基本立入禁止で、だれも寄り付かない場所の一つだからだ。

だって、どこに行っても、やれ、彼女を奪われただの、やれ、別れただのとうるさいからだ。

いや、最初の方はなんともなかったんだけど、次第に監視されてるみたいで、疲れてしまったのだ。

そして、理由はもう一つあり、それは、、、。俺の趣味が全開にしてできる、唯一の場所だからだ!

俺の趣味は家族以外誰にも言っていない。一回、仲の良かった子に言ったら、気持ち悪いといわれてしまったことがあるからだ。

多分そいつにとっては、雑談の中の笑い話だったのだろう。

しかし、俺は、その言葉でひどく傷つき、臆病になってしまった。

だが、そいつのことは恨んでもないし、気にしてもいない。

確かに、俺の趣味は世間一般的には、変だからだ。

そう考えているうちに、屋上へと続く階段についたようだ。

うん。やっぱり、落ち着く。


「早速やろう!!」


そういえば、まだ俺の趣味を言っていなかった。

俺 の趣味は『裁縫』だ。

裁縫といっても、主に手縫いで、ぬいぐるみを作っている。

だが、いつかは、服を作って誰かにきてもらいたいと、心のなかで思っている。


チクチクチクチク


楽しいな〜。

嫌なこととか、どうでもいいことが、全部とんでいく気がする。

そうしていると、あっという間に時間が進んでしまった。

1時間くらいやっていたのかな、、、?

もう少し、やろうかな。

家に帰っても、うるさいやつらがいっぱい、いるからな。


カタッ、、、、


、、、、なんだ?

今、物音がしたような、、、

いや、気のせいか。

きっと気の所為だ。

うんそうに違いない。    

なぜ俺が、こんなに焦っているのかというと、俺はおばけが大の苦手なのだ。

ゾンビとかは平気なんだけど、おばけは、さわれないから、無理なんだよな、、、


カタン、カタン、、、、、、、、、、、


やっぱり、気の所為じゃないかも、、、?

音がする。

階段を登ってくる音だ。

でも、この、屋上に続く階段は、基本的に立入禁止だから”いる”なんていうことは、決してないはずなのに。

俺?

俺は、別にいいんだよ。

だって、許可は、、、、もらってないけど、常習犯だから、ここは俺の場所っていって良いはずだ。

多分、、、

カタン、カタン


そんなことをしておるうちに、音がこちらに近づいてきた。

どうしよう、どうしよう。

まじで、おばけはだめなんだよ〜!

俺の、顔がサーっと、血の気が引いていくのがわかる。


カタン。

シーン、、、、、、、、、


、、、音が、やんだ?

頭を抱えている、俺のもとに、声が降ってきた。


「だれかいるの?」


その声は、女にしては低くて、男にしては高い声だった。

俺は、意を決して顔を上げた。

そうして、見てみると、そこには背の低くて、可愛らしい男がいた。


「あなた、、、
 チャラ男って噂の2年生の東 染里先輩ではないですか!」


はっ!と、俺が放心した後から、正気に戻ると、今度は、まずい、どうしよう、という思いと、焦りがうまれてきた。

決して、知られてはならない。    

そうしないとまた、俺の好きなことを、やりたいことを否定される。

とり、とりあえず、隠さないと。


「何しているんですか?」


「いや、なにもしていない。」


「えぇ〜。、、、じゃあ、この人形は何なんですか?」


これ、もう隠せないかも、、、。

それに、話したほうが得策かも。

だって、この子。

めっちゃ興味津々な顔しているもん。

こんな思いが、僕のなかを駆け回った。

まぁ、単純に言うと、面倒くさくなったのだ。


「う〜んとね、これは、僕が作った人形だよ。」


「、、、マジですか?」


「申し訳ないが、マジだ。」


「なるほど、、、」


「はっ、おかしなやつだとか、気持ち悪いとか思うか?」


この子の反応はいつしか俺が、見た光景に似ている。

きっと、こいつも、俺を貶すのだろう、、、


「別に全然、おかしくもないですし、気持ち悪くもないですよ。
 というか、なんでそんなこと言うんですか?」


こいつは、何も言わないんだな。

俺は、何も言われないということに、少しの衝撃と、大きな嬉しさが俺のなかを、駆け回った。


「いや、なんでもない。
  少し、昔のことで、色々あったから、ちょっと衝撃がすごくて、、、」


「そうですか。」


こんなにもあっさりとしているんだな。

なんか、必死に隠していた俺が、馬鹿みたいじゃないか。

そういえば、この子の名前は、、、

なんだっけ。

女子が騒いでいたのは、なんとなく知っているんだけど、興味なさすぎて思い出せない、、、


「ねぇ、君。
 名前は?」


「僕ですか?そういえば、自己紹介してませんでしたね。
 せっかくなので、互いに自己紹介しましょうか。
 まず僕からですね。
 改めまして、僕は1年生の望月(もちずき) 海莉(かいり)といいます。
 趣味は、剣道で、好きな科目は歴史、特に日本史が好きです。」


「東 染里、3年生。
 えーと、可愛いもの全般が好きで、趣味は裁縫。
 好きな科目は数学かな。」


、、、まって。その場のノリで、スルーしようとしていたけど、剣道?この顔と身長で?


「あ〜、先輩。
 いま一瞬、『こいつが、剣道?』って顔しましたよね?」


その言葉に、俺はギクッとした。
なぜなら、俺の考えているところを、望月は正確に、まるで、俺の思考を見透かしたように当ててみせたからだ。


「先輩、良くないですよ。
 それ、先輩が周りの人にされてきたのと同じことですよ。」


、、、たしかにそうだ。俺も、自分のことを否定されたみたいで、とても嫌な気持ちになったことを、今でも、ありありと覚えている。


「ごめん、、、」


「別にいいですよ。
 言われ慣れていますし。」


「いや、本当にごめん。
 自分が嫌なことだったのに、それとおんなじことを、望月、お前にしてしまった。
 だから、ごめん。」


「、、、ハハッ。
 先輩、意外ときちんとしているんですね。
 もっと軽薄で、軽い人だと思っていましたよ。」


「それは、、、。
 周りのせいだ」


こいつ、いい意味で、まっすぐな性格、悪い意味で、融通が利かない性格だな。
でも、こいつなら大丈夫かもしれない。
俺の趣味をいっても、全然嫌なこと言わなかったし、信頼できるかもしれない。


「なぁ、このことは秘密にしておいてくれないか?
 俺は、このことを誰にも言いたくないんだ、、、」


「わかりました。
 先輩が言いたくないのなら、いいませんよ。」


望月には、俺が裁縫が趣味なことを言わないようにと、改めて約束させて、それから、俺達は別れた。











もうあうこともないだろうと思う。
なぜなら、俺と、望月は普通なら、絶対といっていいほど、関わることがない相手だったからだ。

それにしても、不思議なやつだったなぁ。
そうして、俺がもの思いにふけっていると、クラスの女子が、話しかけてきた。


「ねえねえ、東君。
 君、1年生の海莉君と、階段から降りてきてたでしょう。
 海莉くんのファンが言ってたよ。」


「あぁ、それね。
 階段で、教室の行き方がわかんなくて、困っていたから教えてあげていたんだよ。」


「ふぅ〜ん。
 東くんにしては、優しいね。」


「あははっ、、、、そうかな。」


やっぱり、女の子と話していると疲れる。なんでこんなに、ならないといけないんだろう。

それに、なんで何も知らないやつに、”俺なんか”なんて、知ったような口をきけるのだろう。

俺はただ、人形さえ作れてればいいのに、、、

俺が、女子との会話に飽き飽きしていたとき、そいつは現れた。


「せんぱ〜い!
 何してんですか〜!」


「望月、、、、なんで、お前がここに、、、」


「なんでって、昨日約束しましたよね!?
 話したいことがあるから来てくれって。
 言ったのは、先輩じゃないですか!」


「そうだったっけ?」


「そうですよ!
 ささっ、はやくいきますよ!
 あっ、女の先輩、東先輩かりますね〜」



「え、えぇ。
 わかったわ。」


女の子は、望月の勢いに、押されて何も言えずにポカーンと、放心しているようだった。

俺は、このときの望月に、不覚にも、心臓を掴まれたようになった。

そうなりながら、俺は、望月につれられて、屋上に続く階段へと向かった。









「望月!
 俺とお前で、約束なんてしていないだろう?」



「そうですけど、、、」


望月は、俺が問い詰めると、少し考えるようにしてから、口を開いた。



「、、、だって、先輩、苦しそうだったじゃないですか。」


「、、、、、」


俺は、なぜばれた、という感情でいっぱいになった。

今までは、うまく取り繕ってきたのに、、、、


「先輩、意外とわかりやすいですよね。」


俺が、わかりやすい?

これでも、ポーカーフェイスには、自信があるんだけどな。

「ほら、今だって。
 眉間にシワ、寄せてますよ。」


「なっ!」


、、、俺って、わかりやすいのかな。


いや、これは絶対に、望月の観察力が、すごいからだと思う。

うまれてこのかた、家族以外に、『わかりやすい』なんて言葉、言われたことないからな。

そうして、俺がひとりでに、納得していると望月はさらなる、言葉の爆弾をぶっこんできた。


「それに、先輩。
 女の人苦手でしょ。」


「、、、!」

「やっぱりあってた。」

「お前、、、俺を試したな?」

「さて、なんのことでしょうね。」

今更、そんな可愛い声で、言われても怪しさ満点だそ、、、

それにしても、こいつ、恐いな。

なんで、こんなに俺について詮索してくるのか?

だけど、理由がわからない。

まさか、俺を脅して、なにかさせようとしているのか?

「お前、おれになにかさせたいのか?
 なんで、そんなに俺に構う?」

「それは、、、内緒です。
 先輩は、可愛いものを、愛でるのに理由なんてありますか?」

「なっ。」

俺は、自分が可愛いと言われたように思えて、思わず赤面してしまった。

そして、こんなかわいい顔のやつをカッコいいと、思ってしまったことも、少し照れくさかった。

いや、そんなはずはない。      

俺は、可愛くなんかないし、こいつは、カッコいいんじゃなくて、”わかんないやつ”、”掴めないやつ”だ。

だから、この動悸は俺の勘違いだ。







あれから、望月はなにかあるたびに、俺に話しかけてきた。

しかし、おれはそれを、拒むことができなかった。

理由は、俺にもわからない。 


「先輩!
 もう僕達があって、1週間はたちましたよね!」


そうか、俺達があの日にあってから、もう1週間もたっていたのか、、、

こいつとあってから、なぜか時間が立つのが早くて、1日がすぐに終わってしまう。

どうしてだろう。

こんな感覚は、初めてだ。

でも、嫌じゃない。


「あぁ、たしかにそうだな。」


「なので、今度の休日に一緒に遊びませんか?」


一緒に、遊ぶ、、、


「俺、誰かと一緒に遊ぶの初めてかも、、、」


「え”っ!本当ですか!!」


「うん。」


俺は、家族、おもに姉と妹と、可愛いもの探しのショッピングに行くことは、多くあった。

なぜなら、姉や妹と一緒なら、かわいいものを見ても買っても、怪しまれることがなかったからだ。

だが、その弊害として、同級生や、学校の人に見られて、”チャラい”だの、”いつも違う女を連れ歩いている”、”遊び人”、という、今につながる不名誉なことも、多く言われたが、、、

まぁ、これも慣れた。

それに、毎回おんなじじゃなくて、違う女の人を連れ歩いているのには、変わりないしね。

ようは、背に腹は代えられないってやつだ。

俺がそんなことを思っていると、急に望月が、黙ったとおもったら、バッと顔を上げてきた。


「先輩!
 絶対に、行きましょうね!」


「あぁ、行こうか。」


「約束ですよ!?」


その時の俺は、望月の勢いに押されながらも、まんざらではなかったような顔をしていたと思う。


「うん。、約束だ。
 なんなら、指切りげんまんでもするか?」


ポソッ
「指切りげんまんですか、、、、。
 その言葉聞いたの、幼稚園いらいかも。」


「なんか言ったか。
 すまん、声が小さくて聞き取れなかった。
 もう一回言ってくれるか?」


望月は、一瞬考えるような顔をしたが、俺が望月にきくと、それもすぐに、もとの可愛らしい顔に戻った。


「いいえ!
 なんでもないです。
 良いですね、指切りげんまん。
 しましょうか!」


俺達は、2人で声を出した。


「「指切りげーまん、嘘ついたーらハリセンボンのーます。
指きった!」」

俺達は、指切りげんまんが、終わると、どこからともなく、笑いがこぼれてきた。


「ふふふっ。」


「あははっ」


しばらくの間、俺達は、顔を見合わせて笑った。

そして、笑いが落ち着くと、俺はどこからともなく、望月に、思っていたことを話した。


「おれさ、本当は、指切りげんまんの歌詞で、”ハリセンボンのーます!”ってあるじゃん。
 それが苦手だったんだよな。」


「そうなんですか?」


「うん。”ハリセンボンのます”って表現が、怖くてさ、、、
 まぁ、年をつれるにつれてなれたんだけどね。」


あれ?

俺、なんでこんなこと、こいつに話してるんだろう。

こんな話、家族にもしたことがないのに、、、、

そうして、俺が、戸惑っていると、望月はあることを言い出してきた。


「じゃあ、こうしましょうよ!
”ハリセンボンのます”じゃなくて、

 ”かわいいもの、も〜らう!”

 にしませんか。
 それなら、先輩怖くないでしょ?」


確かに、それなら怖くない、、、

それに、、、、


「かわいいもの、もらえるの、良いな。」


しまった。

おもわず、心の声が口から出てしまった。

笑われたりしないかな、、、、?

俺の、心配とは裏腹に、望月の目は、キラキラと輝き出した。


「でしょ、でしょ!
 可愛いものがもらえるなら、少し、約束破ったことも、水に流せてしまうでしょ?
 僕って、名案を生み出すのが得意なんですかね!?」


「ふふふっ。確かに、かわいいものもらえたら、水に流してしまうかもな〜」


こいつは、こんなにもあどけなく、純粋な顔をするんだな。

いつもの、かわいい顔と、かっこいい顔以外にもこんな、優しい一面があるなんて、、、、

不覚にも、キュンとしてしまった。

この気持ちは、一体何なんだろう——








「——それじゃあ、先輩、土曜日の10時に駅の時計台前集合ですからね。
 忘れたら、可愛いものを1つもらっちゃいますからね?」


「わかってるよ。
 お前こそ、忘れたら、可愛いもの取るからな、、、、
 遠慮はしない。
 覚悟しとけ、、、」


「はい!
 それでは、また明日!!」


それから、望月と俺は、待ち合わせの場所と時間を決めて、俺は家に、望月は剣道部へと帰っていった。

それにしても、こんなにワクワクするのはいつぶりだろうか。


ポソッ
「楽しみだな〜」


俺は、胸の高鳴りを抑えられないまま帰宅した。

あんなことになるとも知らず——







そして、望月と遊ぶ日、当日が来た。


「今は、、、、
 9時40分か。
 うん、なかなか良い時間なんじゃないのか。」


俺は、この時間なら望月がいないと踏んで来たのだ。

だって、20分前に来るやつなんて、そうそういないからね。

ん?

なんか、時計台の周りがざわざわしているような、、、、

一体なんだろう。

このときの俺は、野次馬精神と、単なる時間潰しのために、その現況を見に行った。

するとそこには、俺が想像もつかないようなことが巻き起こっていた。


「なっ!」


なんと、望月が女の子たちに囲まれて、動物園のパンダのような状態になっていたのだ、、、

でも、たしかに今日の望月は、いつもの可愛らしさが抑えられていた。

しかし、そのかわりに、溢れんばかりのかっこよさと、つややかさがにじみ出ていた。

革の上着に、黒い帽子、ダボッとしたデートパンツ、そして左耳には、多分イヤリングだろうか、シルバーの大人っぽい飾りが1つ、ついていた。

とにかく、かっこよかった。

思わず俺は、顔が熱くなるのがわかるくらいに、赤面してしまった。

そうして、俺の思考が停止していると、望月が俺に気づいて、近づいてきた。


「あっ!せんぱーい!!」


望月が俺に近づいてくると、望月を見ていた女の子たちが、一斉に俺の方を見てきた。

どうしよう、、、

とっても、気まずい。

それに、今日は俺とのお出かけなのに、望月を熱心に見られるのはやだな、、、、

ハッ。

待て、待て、待て。

俺は今、嫉妬したのか、、、?


「先輩、おはようございます!」


「あぁ、おはよう。
 それにしても、早いな。
 いつからいたんだ?」


「え〜っと、、、
 だいたい9時35分くらいですよ!
 目がさめてしまって
 僕もいま来たところなので!」


なんだ、そうなのか。

てっきり、俺と一緒で、今日が楽しみすぎて早く来てしまったのかと思ったじゃないか、、、

って、俺は何を考えているんだ。

さっきから、変だぞ。

嫉妬したり、望月もって考えたり、、、

俺はおかしくなってしまったのか?

そうして、俺が思考の沼に入りかけたとき、望月が声をかけてきた。


「先輩?
 どうかしました?」


「、、、いや、なんでもない。
 そんなことよりも行こう。
 美味しいクレープやさんがあるって、Instagramにのってたんだ。」


「はい、行きましょうか!」


こうして、俺達のお出かけは始まった。








「先輩、これじゃないですか?
 美味しいクレープのお店。」


「うん、これだ。」


「それにしても、クレープなんて結構前にブーム終わりましたよね。
 先輩はクレープが好きなんですか?」


「いや、実は、、、
 俺、クレープ食べたことなくて。
 だから、食べてみたかったんだ。」


「そうだったんですね。」


呆れただろうか。

こんなものまで食べていないとはと、、、


「実は僕も、食べたことあんまりないんですよ。」


「そう、なのか?」


「はい。
 というか、僕の身の回りの、大体の人は食べてないですね〜。」


望月のことばに、少し安心した。

俺以外にも、食べていない人はいるのだということに。

そうして、俺が密かに喜んでいると、望月はなにか気がついて、目を輝かせ始めた。


「どうした?」


「先輩!お化け屋敷がありますよ!!行きませんか?」


「お化け屋敷、、、」


俺、お化け屋敷苦手なんだよな、、、、

けど、こんなにキラキラとした目をみせられたら、行かないとは言えないし。

よしっ、腹くくっていこう。

たかがお化け屋敷だし。

大丈夫、大丈夫。

、、、なはず。


「うん。いいよ、行こうか。」


「本当ですか!?やった〜」


俺の一言でこんなにも、テンションがあがるんだな。

良いって言って良かった。







そして、俺達はお化け屋敷の中に入った。


「ぎゃー!!!!!
 望月、手、離さないでよ、、、」


俺は、やはりと言うか、お化け屋敷はだめだった。

そのため、半ば意識が飛びながらも、望月に寄りかかっていた。


「先輩、、、
 だめなら、そういってください。
 申し訳ないじゃないですか。」


「だって、望月を喜ばせたかったんだよ、、、」


俺はその言葉に、半分泣きながら言った。

そして、望月は少し考えるようにしてから、、、


「先輩のことは、俺が守りますよ。」


「なっ、、、!」


俺はその言葉に、顔が茹でああがるような思いになった。

そして、このとき俺は、こいつのことが”好きだ”と、実感してしまった。

やばい、こいつの顔がまともに見れない。


「先輩、行きますよ。
 俺に捕まっててくださいね。」


「うん、、、」


俺は、望月の服を掴んで、出口までついいていった。







「それじゃあ、また学校で!!
 今日は楽しかったです。
 また、遊びましょうね。」


「あぁ、またな。」


大丈夫だろうか。

俺は、来週から望月の顔をちゃんと見れるだろうか。

あんなにも、かっこよくて、可愛いなんて、反則だろ、、、、

そんな事を考えながら、明日に向けて、そして来週のことを考えて俺は就寝した。






「あ〜ず〜まっ!」


「なんだ、相原。
 朝からそんなにテンション高いなんて、すごいな。」


学校に行くと、相原が話しかけてきた。

しかも、いつもよりも、テンションが高い気がする。


「東お前、、、
 昨日、望月ちゃんとデートしてただろ!」


「は?デート」


俺は、その言葉に、表面上は冷静で何事もなかったように振る舞っていたが、内心とても焦っていた。

なぜなら、俺のせいで望月の評価が下がるようなことはしたくなかったからだ。


「何だよそれ。
 あいつとは、たまたま会っただけだし。
 そんな関係じゃねぇよ。」


「な〜んだ。つまんない、、、」


俺は、その時焦りすぎていて、思ってもみないことを口走ってしまった。


ガタンッ


「望、月、、、」


「あっ、し、失礼しました!」


「待て!
 望月!」


なんと、望月が俺たちの話を聞いているという、最悪の事態が起こった。

どうしよう、と焦る気持ちのなかで、オレの足は動かなかった。



*


あの事があってから、約半年が過ぎてしまった。

俺は、今もまだ勇気を出せずにいた。

嫌われているかも、という思いが俺を縛ったからだ。


「ねぇ、ねぇ!
 告白しなよ!
 ここで、やらなかったら、あんた一生、後悔するよ!」


「うん、そうだね。
 私やってみるよ!」


その言葉に俺はハッとした。

確かに、言わないと、分からない。

言おう。

言って、好きだと伝えよう。

そう、俺のなかで決心がついた。



* 


学校を探しまわっていると、望月が渡り廊下で、物思いにふけっているようだった。


「望月!」


望月は、何かに逃げるように、走った。


俺は焦って、思わず、


「望月!
 この間は、ごめん!
 咄嗟に酷いこと言った。
 嫌なら、嫌いになったなら、逃げてもいいから、、、
 せめて、話をさせてくれ。」


「、、、」


やっぱりダメか、、、



「はぁ、そんなこと言われたら、逃げられませんよ。
 まったく、仕方ないんですから、、、」


望月は、どこか憎らしそうな、けど、愛おしそうな目で、俺をみた。


「別に先輩に悪気がないことくらい、わかって「望月。」、、、ん?なんですか?」


話を遮るのはよくないとわかっていた。

けれど、溢れる思いを、止めることはできなかった。


「好きだ。俺は望月のことが好きだ。」


シーン


世界の騒音から切り放されたように、時間の感覚が一瞬なくなった。


「、、、僕もです。
 僕も、先輩のことが好きですよ。」


一瞬何を言っているのか、わからなかった。

しかし、次第に嬉しさが込み上げてきた。



「あ~、もう、泣かないでください。
 困ってしまいますから。」


「ごめん、でも、嬉しくて。」


「仕方がないなぁ~」


チュッ


おでこにキスされた。

俺は、顔がタコみたいになった。

しかし、彼は余裕そうな顔で、



「あ、泣き止みましたね。」



と、悪戯っ子のような顔で、可愛くてかっこいい彼は言った。



その時、俺たちを桜の蕾が見守っているようだった。