ついにリレーが始まった。
正直どのブロックもバトンリレーの練習は全体練習で一度した程度の付け焼き刃のチームだ。だなら実力は大差ないとおもう。
ただ唯のいる青ブロックは二年生が陸上部の長距離ランナーで、多分そいつが一番足が速そうとのことだった。
「位置について、よーい」
電子ホイッスルの合図が鳴り、一斉にスタートする。
出走順は一年の男子、一年の女子、二年の女子、二年の男子、三年の女子、そして団長が二周走る。今回はそのラスト一周を俺が肩代わりする予定だ。
赤ブロックは青に続いて最初の走者に二番目にバトンを渡された。
「いけー!!!」
やっぱり走っているところを見ると興奮してしまう。自分が走る順番がすぐに来るのに、声を出してしまいがちだ。
(唯、頑張れ。唯!)
なんて心の中ではつけ足してる。ロミオ&ジュリエットがなんだ。俺はいつでも唯の味方だ。
唯は早かった。ガチ走りしてるとこを初めて見たけど、俺と互角かもしれない。
脚が長いせいもあって一歩でぐんぐん進むイメージだ。二年の女子に一番でバトンを渡してた。
(俺も負けてらんねぇ)
朝も競技の前も手足のアップをちゃんとしたし、ここんところ唯と一緒に夜ランニングしたりもしてた。
俺の家から唯の家まで走って、帰りは唯が俺を送って走ってきて、もう一回唯の家にいこうとしたら「これじゃ夜明けまで終わらないですよ」って唯が笑って……。
(キスしてくれたっけ……。はずっ)
にやけてる場合じゃない。
俺に一年の女子からバトンが渡る。先に飛び出していった青ブロックの選手を追わないと。
もっと気温が上がるかと思ったけど、わりと爽やかで、風を切って走ると気持ちがいい。
トラック一周のうちに、俺は陸上部のすぐ後ろに肉薄した後、三年の女子の先輩にバトンを渡した。
三年生の先輩たちは混戦模様で、赤と青が先に飛び出した。続いて黄緑と続く。
俺は佩けずに最後のランナーの団長と赤の副団長が並んでいる列に立った。
「南澤君、すごい追い上げだったよお」
お祈りのポーズでちょっと涙目が残った副団長は震える兎みたいに可哀そうだ。
「私も頑張るから、南澤君ラストお願いね」
「はい」
ビリにでもなったら、副団長にああだこうだいい奴が現れるかもしれない。
これまで応援団をまとめて、みんなを鼓舞してきた副団長の為にも、それだけは断固阻止しなければ。
俺は副団長を勇気づけたくてハイタッチの形に手をあげた。副団長はそれに気づいて手をぱちんって合わせてくれた。
「気合い入りました。任せてください。絶対ビリにはならないから。約束します」
「頼もしいよお。頑張ろうっ」
副団長が団長たちに交じって位置につく。背丈がまるで違って心細そうな背中だ。
副団長にバトンが渡って、ここからが勝負だ。
流石、元陸上部。赤の副団長もすごく頑張っているけど、やっぱり後ろから他の二ブロックの先輩たちに追い抜かされて行ってしまう。
前を行く団長たちがトラックの半分まで来たところで俺も定位置につく。
羽織の脇に手をかけて、裾をばさばさって払って、大きく深呼吸をした。
俺の横を青緑黄の団長が通り過ぎ、風が巻き起こる。後ろから必死な顔で駆けつけてくる副団長が腕を必死の顔で伸ばす。
その手から手へ、俺はバトンをがっしり、掴んだ。繋がる、力が集約する感覚。
「みなみざわあ! おねがい!」
(任せろ!)
正直どのブロックもバトンリレーの練習は全体練習で一度した程度の付け焼き刃のチームだ。だなら実力は大差ないとおもう。
ただ唯のいる青ブロックは二年生が陸上部の長距離ランナーで、多分そいつが一番足が速そうとのことだった。
「位置について、よーい」
電子ホイッスルの合図が鳴り、一斉にスタートする。
出走順は一年の男子、一年の女子、二年の女子、二年の男子、三年の女子、そして団長が二周走る。今回はそのラスト一周を俺が肩代わりする予定だ。
赤ブロックは青に続いて最初の走者に二番目にバトンを渡された。
「いけー!!!」
やっぱり走っているところを見ると興奮してしまう。自分が走る順番がすぐに来るのに、声を出してしまいがちだ。
(唯、頑張れ。唯!)
なんて心の中ではつけ足してる。ロミオ&ジュリエットがなんだ。俺はいつでも唯の味方だ。
唯は早かった。ガチ走りしてるとこを初めて見たけど、俺と互角かもしれない。
脚が長いせいもあって一歩でぐんぐん進むイメージだ。二年の女子に一番でバトンを渡してた。
(俺も負けてらんねぇ)
朝も競技の前も手足のアップをちゃんとしたし、ここんところ唯と一緒に夜ランニングしたりもしてた。
俺の家から唯の家まで走って、帰りは唯が俺を送って走ってきて、もう一回唯の家にいこうとしたら「これじゃ夜明けまで終わらないですよ」って唯が笑って……。
(キスしてくれたっけ……。はずっ)
にやけてる場合じゃない。
俺に一年の女子からバトンが渡る。先に飛び出していった青ブロックの選手を追わないと。
もっと気温が上がるかと思ったけど、わりと爽やかで、風を切って走ると気持ちがいい。
トラック一周のうちに、俺は陸上部のすぐ後ろに肉薄した後、三年の女子の先輩にバトンを渡した。
三年生の先輩たちは混戦模様で、赤と青が先に飛び出した。続いて黄緑と続く。
俺は佩けずに最後のランナーの団長と赤の副団長が並んでいる列に立った。
「南澤君、すごい追い上げだったよお」
お祈りのポーズでちょっと涙目が残った副団長は震える兎みたいに可哀そうだ。
「私も頑張るから、南澤君ラストお願いね」
「はい」
ビリにでもなったら、副団長にああだこうだいい奴が現れるかもしれない。
これまで応援団をまとめて、みんなを鼓舞してきた副団長の為にも、それだけは断固阻止しなければ。
俺は副団長を勇気づけたくてハイタッチの形に手をあげた。副団長はそれに気づいて手をぱちんって合わせてくれた。
「気合い入りました。任せてください。絶対ビリにはならないから。約束します」
「頼もしいよお。頑張ろうっ」
副団長が団長たちに交じって位置につく。背丈がまるで違って心細そうな背中だ。
副団長にバトンが渡って、ここからが勝負だ。
流石、元陸上部。赤の副団長もすごく頑張っているけど、やっぱり後ろから他の二ブロックの先輩たちに追い抜かされて行ってしまう。
前を行く団長たちがトラックの半分まで来たところで俺も定位置につく。
羽織の脇に手をかけて、裾をばさばさって払って、大きく深呼吸をした。
俺の横を青緑黄の団長が通り過ぎ、風が巻き起こる。後ろから必死な顔で駆けつけてくる副団長が腕を必死の顔で伸ばす。
その手から手へ、俺はバトンをがっしり、掴んだ。繋がる、力が集約する感覚。
「みなみざわあ! おねがい!」
(任せろ!)



