青龍の華嫁 ~稀血の悪女~

次の日、幸華が学校に行くとクラスメイトが群がる。

「幸華!聞いたわよ、青龍様の婚約者になったんですって?」
「稀血の花嫁だったのは幸華だったってホント?」
「ちょっと!だとしたら妖軍団は幸華に近寄らないで!」

女子達が興奮した顔で詰め寄る中、茶納は呆れたように皆の輪から幸華を引き離す。

「はいは~い!幸華は婚約発表後で疲れてんの。話はあとあと」

席に向かえば珍しく鬼楽がいた。
今日は遅刻せず登校できたようだ。

「はよ、お前も大変なのな」
「全く…今まで散々と幸舞さんを味方してきた人間が。稀血の花嫁が幸華と分かった瞬間に手のひら返しするんだから」
「妖も同じ事が言えるけどな。幸華は昨日ぶりだけど、あれから大丈夫か?」

鬼楽家は青龍家の生誕会にも出席していたし、幹治は幸舞との騒動で幸華を守ってくれた一人だ。

「大丈夫だよ。昨日はありがとう」
「お~また何かあればいつでも言え。鬼なら妖の中で最も強いし、勝てる奴はまずいないから」
「それは頼もしいね!」

すると首に巻き付いたハクが不貞腐れたように舌を出していた。鬼楽に威嚇すれば上からは水が落とされ、鬼楽はずぶ濡れになってしまった。

「あ、コイツ、、!何すんだよ」
「け、(笑)」
「この野郎!青龍様の使い魔だからって鬼を侮辱しやがって」

怒った鬼楽に更なる追い討ちをかけないよう、幸華は慌ててハクを引き戻す。

「こらハク、どうしてそんなことするの」
「だって…幸華様を救えなかった。コイツが代わりに幸華様を救うなんて気に入らない。鬼に白蛇が負けるなんて嫌だ」
「理不尽…」

茶納と呆れたように笑う。
鬼楽は鬼火で服を乾かせば眠いと言って教室を出て行ってしまう。恐らく保健室だろう。

「そう言えば茶納、あれから火鼠君とはどうなった?」
「あ!それなら彼から正式に謝罪がきたよ。自分の落ち度だってすんごい反省してたな~」

あれから正気を取り戻した火鼠君は今までの行いを改め、また一から茶納にアタックをしているようだ。二人が再び付き合う未来も遠くないかもしれない。

「幸華はあれから青龍様の家で暮らしているのよね?」
「婚約が内定したからね。旧館も焼けちゃったし。新館の方はお姉ちゃん達の名残りが残るせいか戻りたくなくて…」

あれから幸舞は学校を退学した。
倫太郎と上が正式に彼女達を遠方の地に送る手筈を整えている最中だという。

「お兄ちゃんの話では千鶴さんの弟さんがこの学校の理事長という立場からも、彼女達を責任もって自分の遠い親戚のいる地に送るって言ってるらしい。彼女達は今も反省してないようで揉めてるらしいけど」
「そっか~でもこれで良かった。これからは安心して青龍様といられるね!」


その日の帰り、校舎には史文が迎えに来てくれていた。
学校中は青龍家の登場に興奮を隠せず窓から身を乗り出す中、史文は幸華に気づくと手を振った。

「幸華!迎えに来た」
「史文様!」

愛し気な美しい金色の瞳が幸華を見つめる。
思わずドキドキしてしまう。

「さあ帰ろう。俺達の家に」
「はい!」

稀血の花嫁と知れた幸華にとって、これはまだほんの始まりに過ぎない。それでもこの幸せがいつまでも続きますように。
今度こそ、不義の子なんかではなく。
困難を乗り越え、幸華は初めて幸せへの切符を手に掴んだ瞬間となれたのだ。