柚葉は本当に朱里のことを好いていた。なんでもない落ちこぼれの柚葉の世話を妬いてくれ、桜久耶の事も心配してくれ。


初めてできた友達のように感じていた。


大変な目にあったけど帝都での買い物も楽しかったと思っていた柚葉。



(全然西園寺さんの気持ちに気づけてなかったわね。自分のことばかりで……。本当に自分が嫌になるわ)


「……もういいかね?これ以上私の孫に手を出さないでくれ。そこの朝雲家の人間もだ。私は全てお見通し。お前たちのやってきたこと全て、知っているからな」



皇帝は朱里と朝雲家を睨みつけるとみんなに聞こえるようにそう釘を刺した。周りはあまりの自体に上手く状況を飲み込めていない。


柚葉は朱里の目をしっかり見つめ、自分の行動に心を痛めていた。



「なんでこうなるのよ……。私は、ただ……桜久耶様に振り向いて欲しかっただけなのに」


「私は柚葉以外愛せない。朱里。お前には感謝してるが、使用人としての育て方を間違えたようだな。朝雲家と手を組んだのも間違いだった。自分で犯して歩んだ道だ。しっかり罪を償え」



朱里が悔しそうに呟いたあと。


桜久耶は容赦なく言葉を吐き捨てた。公衆の全面でこのような仕打ちをされ、朝雲家も朱里も十分心に傷を追った。



「……旦那様。ここまでで、よろしいのではないですか?」



柚葉は桜久耶の言葉を聞いてから、そう呟いた。これ以上朱里のことを傷つけたくないと思った柚葉。



「そうか。柚葉がいいなら、もう会場から追い出そう。皇帝様もよろしいでしょうか?」


「いいだろう。見せしめはこれくらいにして、あとはこちらに任せなさい。……連れて行け」



皇帝にも許可をとり、そのまま朱里と朝雲家の人間は連れていかれた。これからどのような処罰が待っているのだろうか。


皇帝の孫に手を出したあの人達は無事では済まないだろう。柚葉はそこまで考えて想像するのをやめた。



(処罰なんて私の考えることじゃないわね。それより……)


「……あの、旦那様。私、舞台を降りてもいいでしょうか?」



急に我に返った柚葉は、そう桜久耶に頼み込んだ。さっきまで朱里を探すのに必死だったから気づかなかった柚葉だったが。


たくさんの高貴な人達に見られていることに今更ながら恥ずかしいという気持ちが芽生えた。



「ん?なんでだ。別にここにいてもいいんだぞ?」