桜久耶は柚葉の様子に気づいて皇帝にコソッと耳打ちした。



「そ、そうだな。そうしよう。園遊会なんだが今は無事に項目通り進んでいる。もう少ししたら朝雲優美の演舞なんだが……私はいかないといけない。お前たちはどうする?」



桜久耶の言葉に皇帝は納得し話題を変えた。園遊会は無事に何事もなく進んでいるらしい。


柚葉はそのことを聞いて少しほっとするが皇帝の優美の演舞について聞かれ、ドキッとした。



「私たちは少しここにいます。今下手に動いて朝雲家に見つかるより、最後私の披露の場で見つかった方がいいですから」



柚葉が悩んでいると、すかさず桜久耶が答えた。桜久耶はもうこの先どうするか決めていた。


柚葉を守りながら朝雲家に復讐する計画を立てている。



(旦那様の披露の場……。そういえば私、旦那様の踊りを見たこと無かったわ。今日見れたりするのかしら。見てみたいわね)


「わかった。私は先に会場に入るから、柚葉と桜久耶は最後の項目の前に入ってこい。きっと朝雲家は柚葉がいないことに混乱するだろう」



柚葉は優美のことを考えたくなくて、別のことを考えた。桜久耶の仕事している姿を見たことない柚葉は、内心ワクワクしていた。



「かしこまりました。では、私は衣装に着替えてから柚葉と共に入ります。そのような形でよろしいでしょうか?」


「それがいいな。いいか?くれぐれも朝雲家には気をつけろよ」



皇帝は桜久耶の話を聞いて、忠告を残して部屋から出ていった。皇帝の側近も一緒に行ったので部屋には柚葉と桜久耶の二人きり。



(あわわ……!気づいたら旦那様と2人きりだわ。どうしましょう、私は何をしたら……)


「柚葉。今回のこと、改めて謝罪する。すぐに助け出せなかったこと、うちの使用人が勝手に連れ出したこと、本当に申し訳ない」


「あ、頭をあげてください!旦那様と使用人の方は悪くありません。出かけたのだって私の意思ですから。それに……記憶がなかった時の私は旦那様に警戒していました。近づけなくしていたのは私です」



柚葉は記憶がなかった時の生活のことは覚えていた。桜久耶に対しての態度、記憶がなくなる前の行動。


全て、柚葉は覚えていて。



「逆に私の方こそ申し訳ございません。お出かけだって私がしっかり断っていればこうはならなかったはずです」



柚葉も自分に責任はある。