自分の身も守れるか分からないのに……と考えながら何とか使用人たちの気持ちをなだめた。



(結界のない外の世界を歩くなんてどうなるのだろう。やっぱりやめとけば良かったかな)



この中には妖の使用人もいた。


考え出したらキリが無くて柚葉は早速不安になった。お世話になっている人たちだから何事もなく終わって欲しい。


そう願いながら柚葉は先頭を歩いた。



「柚葉様、私もいるので大丈夫ですよ。ここにいる方たちは私には逆らえません。私にお任せ下さい」


「西園寺さん。そ、そうなんですか?」



ため息をこぼしそうになった柚葉に朱里がコソッと耳打ちした。


なにか企んでいるような、そんないたずらっ子のような言い方で柚葉は苦笑いしてしまう。



「はい!なので大丈夫です!」



柚葉の不安な気持ちを無くすような明るい返事に柚葉は少し安心した。



(西園寺さんは頼りになるわね。少し怖いところもあるけど……)


「柚葉様、こちらのお店、見てみましょう!」


「そうね!」



柚葉は不安な気持ちを誤魔化すように使用人たちと帝都の町を楽しんでいた。


時間が経つと来た時の気持ちはすっかり薄れ、柚葉は普通の女性のようにはしゃいでいた。



「この髪飾りなんかお似合いですよ!」


「こっちの着物も可愛いわ〜!」



それぞれ気になる品物を見たり、少しばかりのお駄賃で買い物したり。楽しい時間を過ごしていた。



(そういえば旦那様と最初にデートした時もこのお店を見たわね。……この櫛、懐かしいわ)



柚葉もお店の中を見て周り、桜久耶とデートしていた時のことを思い出していた。



「柚葉様、気になるものはありました?」


「ええ。この櫛なんだけどね……。あ、れ……?」



櫛を見ていた柚葉に朱里が声をかけた。気になる品物を聞かれ、迷わず櫛を指さし、桜久耶との思い出を話そうとしたのだが。


……その“思い出が思い出せない”。



「どうされました?大丈夫ですか?」



固まる柚葉に朱里は話しかけ続ける。



(どうしたのかしら。さっきまで旦那様とのことを思い出していたのに……モヤがかかったかのように思い出せない)



頭の中ではわかっているのに話そうとすると言葉が出てこない。楽しかった思い出だけが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。



「……ふふ。やっと、見つけたわ。お姉様」