思いの外、他の使用人もノリノリで楽しそうな雰囲気。柚葉は気づいたら余所行きの着物を着て、化粧まで終わっていた。



(旦那様に知られたらなんて言われるか。でも……これはこれで少し楽しいかも)



柚葉は内心ダメだとわかっていても楽しいと思ってしまった。こういう経験は初めてで、桜久耶と過ごすときとは違う感じ。


同性同士特有の楽しさを柚葉は知ってしまった。



「柚葉様。少し。ほんの少しだけでいいので私たちに時間をください。柚葉様と楽しい時間を過ごしたいのです」



戸惑いながらも準備をしていた柚葉に朱里がお願いしてきた。


最近は桜久耶との時間にかかりきりで朱里とはあまり話せていない。そのことを思い出した柚葉は胸がぎゅっと痛み、気づいたら頷いていた。



「わかりました。少しだけですよ。旦那様には内緒です。ですが……女中頭の早坂さんには断りますよ」


「ありがとうございます!柚葉様!」



たまにはこういうのも悪くない。そう思った柚葉は一応女中頭の早坂に断りを入れ、短時間ならと許可を貰った。


柚葉と使用人数名で出かけるのは初めてで。ワクワクと好奇心を抑えきれなかった柚葉。


この後、に事件が起こることを誰も予想することができなかったのだった……。


***


「わぁ!帝都なんて久しぶりに来たわ!前よりもだいぶ西洋のものを取り入れてるわね!」


「流行りの着物も髪飾りもみんなお洒落ね!」



東條家から少し歩くと帝都はあった。


使用人たちはみな目を輝かせながらきゃあきゃあと楽しんでいる。東條家の使用人として働く彼女たちは滅多に外出はできない。


外に出るとしたらおつかい程度。


あまり外出できないのには理由があった。


東條家には妖も働いている。妖は一般の人には見えないもので、今の時代はほとんど逸話として扱われている。


そのため、悪い気が入らないようにと東條家には結界が張られ、妖には人間の香水のようなものをふりかけて化けていた。


異能の力がなければ妖とは分からない。


柚葉は感じる力があったので見分けることができるまで成長していた。


外出できない理由もみんなのことを守るため。そういう話を前に桜久耶から柚葉は聞いていた。



「皆様、あんまりはしゃがないでください。旦那様はいませんので、なるべく行動は抑えてくださいね」



柚葉1人では使用人達を守りきることはできない。