黙りこくってしまった柚葉を不思議に思ったのか桜久耶は顔をじっと見つめる。



「な、なんでもないです。それより、早く食べちゃいましょう」


「そうだな」



柚葉はモヤモヤした気持ちが残っていたが桜久耶を困らせないようにと笑顔で話を逸らした。


その後も他愛もない話をしながら朝ごはんの時間を終えると。


桜久耶はいつものように仕事にでかけて行った。



「……柚葉様。どうかされました?」


「西園寺さん。なんでもないですよ。今日は何をお手伝いしましょうか?」



桜久耶を見送っていると後ろから朱里が話しかけた。朱里は今でも柚葉のお世話係を任されていて、今では一番の仲の良い人。


朱里は心配そうに柚葉を見るが柚葉は何も話そうとしない。



「……今日は、お手伝いはおやすみしましょう。そして私供と少し気分転換に帝都の方に行きませんか?」


「西園寺さん!?急にどうしたんですか。帝都に行くだなんて……。旦那様に何も話していませんよ?」



柚葉の返事を聞いた朱里は少し考えたあと。突然帝都に行こうと提案してきた。


そのことに驚く柚葉だったがそれもそのはず。


帝都になんか桜久耶とデートした時とこの前の王宮に行った時以来行っていないのだから。



(旦那様の断りなしに帝都に行くなんて……考えたこと無かったわ。きっと心配するでしょうし、これは断るべきよね)



柚葉は迷うことなく断る方向で頭の中で話をまとめていた。


勝手に外出して自分の身になにかあったら桜久耶に迷惑をかけてしまう。そう、柚葉は思ったのだ。


これでも朝雲家に育てられた人間。


そして最近知った事実。柚葉は皇帝の孫に当たる人間でもある。これからは迂闊に外に出ることもできないだろう。


それこそ、優美やあさぐも館の客にでも見つかったら何をされるか分からない。



「あ、あの……。申し訳ないけど私は……って西園寺さん!?」


「桜久耶様は大丈夫ですよ!私たちがしっかり柚葉様をお守りします!たまには女子同士、お出かけ行きましょう!」



断ろうとした柚葉を遮り、朱里はキラキラとした笑顔で柚葉を引っ張った。


朱里は出かける気満々で他の使用人も誘っている始末。そんな楽しそうな朱里の姿を見て柚葉は困ってしまった。



(どうしましょう。断ろうと思ったのだけど、話が進んでしまったわ)



朱里に引っ張られながら柚葉は流れに身を任せるようにあれよこれよと準備が進められた。