「……桜久耶。今、悪い予知が見えた。柚葉が、朝雲家で大変な目に合っている」


「私も、見えました。わかっています。申し訳ございませんが今から朝雲家に行ってまいります!」



しばらく沈黙した後。


桜久耶と皇帝は同じ予知を見ていた。それは今話していた柚葉の今の状況について。


2人に取って大切で、大事な人の予知を見ていたのだ。それは柚葉が朝雲家の人間にむち打ちされてる場面。


実は昨日の夜、桜久耶は花魁道中の様子を少し見ていた。そこで柚葉は転んでしまった。助けに出ようとしたが今の立場上それは出来ない。


心苦しかったが桜久耶はその場を離れ、今日の報告の時間に至るのだが。


その制裁が今下されていた。



「ああ、無茶はするな!柚葉のことをよろしく頼むぞ!」



いてもたってもいられなかった桜久耶は。


皇帝の部屋を飛び出して行った。


***


そこからは怒涛の日々を過ごした。


桜久耶は柚葉の元へ助けに行ったのだが目の前で婚約の話を断られた。


だが朝雲家の人間はまだ柚葉に婚約の話をしていなかったのだ。


柚葉は痛みと緊張と朝雲家からの圧に負け桜久耶からの縁談話を断る。それも何度も何度も。


だけど桜久耶もめげない。


デートを申し込み、徐々に距離をつめた2人は。


互いに惹かれ、無事に婚約を果たすことができた。


……だけど。


皇帝の言っていた柚葉の異能の力はなかなか目覚めない。それは桜久耶が柚葉の運命の人ではないという暗示かもしれない。


そう思いながら、桜久耶は警戒心が強く、遠慮がちな柚葉を全力で愛した。


幸せな結婚生活……とはまだ程遠いが桜久耶は柚葉を助け出すことができて満足していた。



(柚葉にいつ皇帝様に会わせるか。今すぐでもいいが混乱するだろうな)



皇帝についてはまだ話さず、柚葉との結婚生活をしてしばらく経った頃。


……柚葉に桜久耶の異能の力。


『赤い糸』が見えたのだった。