優美の相手をしながら柚葉を観察するため、あさぐも館に通った。柚葉は朝雲家の娘としては扱わず、使用人として扱われていた。


義理の両親と妹からはひどい仕打ちを受けていて。調査内容を聞けば聞くほど耳を塞がなくなる情報が入ってくる。


それを皇帝にも報告しながら、どうにか朝雲家との繋がりを保った。父親に頼み込み優美との縁談話を保留にしてもらい、時間をかけて朝雲家の闇を暴いていった。


皇帝はこの内容を知っていたのかもしれないが桜久耶は自身で調べ、知りたいと思った。



(やはり柚葉は私の運命の人だ。私の求めていた愛する人がこんなにも近くにいたとはな。皇帝様に感謝せねば)



桜久耶は確実に柚葉を嫁に迎え入れるため、念入りに準備をした。


そして、朝雲家に柚葉との縁談話を持ち込む日になると。桜久耶は準備していた証拠やらをしっかりと持ち、深呼吸した。


いつもは夜に朝雲家に行っていたがその日は違った。柚葉を驚かさないようにと日中に訪れた。


実は一回だけ柚葉と言葉を交わした桜久耶。我慢できず、今にも壊れてしまいそうな柚葉と話して、絶対に守ると心に誓っていた。



「……あら、東條様。お待ちしておりましたよ、どうぞ中へ」



本館を訪れるとこれまた綺麗に着飾った優美の母親がいた。



(……ああ、そういえば今日は花魁道中の日だったな)



珍しく緊張した桜久耶がぼんやりとそんなことを考えていると。中では完璧に化粧をし、着物をきた優美がいた。


桜久耶は辺りを見渡したがやはりそこには柚葉はいない。


家族の大事な縁談の話を持ち込んできたというのに柚葉は朝雲家の中だと他人なのか。


柚葉は両親が義理だということを知らない。それを利用して、色んな悪事をしてきたこの家族を。


私も皇帝も許さない。



「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます」



怒りを抑え込みながら、挨拶をすませた桜久耶。



「こちらこそ、ありがとうございます。東條家直々に縁談話を持ち込んでいただいて……。さて、早速その話に移りましょうか」



父親が機嫌よく話を進める。


父親だけでは無い。この家族全員が心做しかみな機嫌が良かった。


政略結婚といえど美しい容赦を持つ桜久耶。皇帝との繋がりがあり、縁談話の相手としては逃がしたくない存在。



「そうですね。では、改めまして、私東條桜久耶は……“朝雲柚葉様”との縁談を強く望みます」