《桜久耶side》


ーー桜久耶が柚葉を見つけることが出来たのは桜久耶の異能があってこそだったのかもしれない。


桜久耶の異能は『縁結び』と『予知夢』。


このふたつの力があったからこそ、柚葉と桜久耶は出会えた。いや、出会えたよいうより運命が決まっていたようにも見えた。


代々、東條家の家系は縁結び神社を営み、国のお偉い方の縁を結ぶ仕事をしていた。それは恋愛に限った話ではなく仕事の縁も見極めたりしていた。


今の桜久耶の仕事は『神主』。


父親から受け継いだこの神社を後世に残すため、働き、婚約を迫られていた。


その婚約者を探す最中だった。


皇帝様からの1人の女性を探して欲しいと依頼を受けたのと桜久耶の未来の花嫁を見つけたのは。


***

時は桜久耶が初めて柚葉を見つけた日まで遡る。



「東條様。お待ちしておりました。さぁさ、中に入ってくださいな」



あの日は花嫁候補だった朝雲館の妓女……朝雲優美に会いにいった。桜久耶は正直、遊郭の町や妓女はあまり好きではなかった。


どちらかと言うと嫌いな方だ。


甘ったるい匂いに甘ったるい声色。高貴な人や懐の深い客に入り込む妓女が大嫌いだった。


そしてその優美という女性は桜久耶の典型的な嫌いな女だった。


だがしかし、東條家の異能の力を考えるとこういった家系の方が相性が良かったりする。


気は向かなかったが父親がうるさいため、桜久耶は渋々、館へと出向いたのだ。



「東條様。まずは優美との楽しい一時をお過ごしくださいませ。話はその後に伺いましょう」


「よろしくお願いいたします、東條桜久耶様」


「……」



中に案内されたかと思えば優美の母親らしき人物はウキウキと気分をあげながら自分の娘を私の前に差し出した。


優美は小綺麗に着飾っていて、自信たっぷりに桜久耶に近づく。



(さすがこの遊郭一番の美少女であり花魁の優美は態度も振る舞いもほかの妓女とは違う。自分の欲しか見えていない女だ)



優美の仕草や話し方、桜久耶に向けて異能を発している姿はすこぶる気持ち悪い。


朝雲家の異能は『誘惑』と『カリスマ性』だった。その異能は縁結びとも相性がよく桜久耶の父親からは一番の候補と説明されていた。


優美の他には娘はいないと聞いていた桜久耶。このあまりにも理不尽な状況にため息しか出てこなかった。