(私は、本当に邪魔者でしかなかったのね。だからお母様も優美もあんなに……)


「あの、それじゃあ……私はお母様の娘なら、異能は受け継いでいない……。それなのに、なぜ私の異能について話そうと?」


「ああ、それはだな……」



疑問に思っていたことを皇帝に尋ねる柚葉。だけどそこでタイミング悪く扉が開いた。



「皇帝様。そろそろお時間です。皆様、揃っていますよ」



扉から皇帝の部屋の前で待機していた部下のひとりが声をかけた。



「……わかった。この話はまた今度しよう。今日はこれくらいで。気になれば桜久耶にでも先に聞いといてくれないか?」


「で、ですが……!」



力無く微笑む皇帝は儚くて今にも消えそうな表情をしていた。柚葉は戸惑いながらも追いかけようとする。が、それを桜久耶に止められた。



「柚葉。悪いが今日はここまでだ。今から会議もあるから、皇帝様を少し休ませてくれないか?」



今まで黙っていた桜久耶が真剣な表情で柚葉を見つめた。それは優しい桜久耶ではなく何か切羽詰まったような感じだった。



「わかり、ました。旦那様がそう仰るなら……」



まだ腑に落ちない柚葉だが、小さく頷く。聞きたいことは山ほどあったがそれ以上に情報で頭がいっぱいいっぱいだった。



「ありがとう。それじゃあ私達も行こう。みんなを待たせる訳にはいかないからな」


「はい」



桜久耶はその後、優しく微笑むと。そっと柚葉を抱きしめ、皇帝の部屋を後にした。


モヤモヤしたものを抱えながら会議に挑む柚葉。だが内容は全然頭の中に入らない。


気になるのは皇帝と桜久耶……それに優美の存在だった。しばらくして、無事に会議も終わり、疲れ果てた2人は。


東條家に大人しく帰っていった。


***


その日の夜。


柚葉は夢を見た。


真っ暗な空間でポツン、とひとり。なんの感覚もなくふわふわ、ゆらゆら揺れながら、辺りを見渡した。



(……私、夢を見ているのかしら。でも、こんな夢を見るのは初めてよ……)



不安になりながらも夢を見ていることを自覚した柚葉。周りには誰もいなくて何も無い。


以前も似たような夢を見たが全然その夢とは違う空間だった。



(もしかして、今日皇帝様から色んなお話を聞いたからこんな夢を見ているの?ねぇ、誰か教えてよ)



縋るようにもう一度見渡すもやはり誰もいない。