そんな長女を可愛がり、次に長男が生まれ、後継者もできたところでその幸せが崩れ始める。



「……私の家系の異能は次の子に強く受け継ぐことが出来ていた。なのに……娘は才能が開花する歳になっても、何も異能は受け継がなかった。長男は受け継いだというのにな」


「そ、……んな……」



そこまで聞いた柚葉はドキッとした。まさか本当の母親も異能が開花しなかったとは。


震えながらも柚葉は最後までじっと皇帝の話しを聞いた。


何も受け継がなかった長女は皇帝の家系の邪魔者と言われ続け、とうとう16歳の頃。この家を追い出された。


父親である皇帝はそれを止めたがそんなことは無駄だった。長女の名は華世という。華世の意思もあり、家を出ていった。


そのあとは、ひっそりと皇帝が華世の行く末を調べていた。どうしても娘を捨てきれなかった皇帝は。


せめてもの罪滅ぼしで娘の無事を確認し続けた。



「娘は出ていったあと、身分を隠しどうやら妓女として働いていたらしい。自分の美貌を理解していたのだろう。娘は着々と位を上げていきとうとう花魁まで上り詰めた」



華世が妓女をしている間、1人の男性に恋に落ちた。その人と愛を誓い、夜の営みを交わして柚葉が生まれた。


だけど、柚葉を産んだすぐ後。


華世は妓女として働くことが出来ず、そのまま行方をくらました。


後でわかったことだったが華世は柚葉を産んだあと、体力が落ち痩せ細り、愛し合った男性に裏切られ、散々な末路だった。


最後は自決し、もうこの世にはいない。


柚葉の父親も行方不明のまま。


ただ、その父親は異能を持っていた。花魁と毎日会えるような富豪で異能も強い。その異能は“縁結び”。



「娘には申し訳ないことをした。だけどあの子が選んだ道。こうして、孫も生まれてるから、まだ幸せなんだ。柚葉はその後娘の働いていた館のツテであさぐも館に引き取られ、義両親の元で育てられた……というのが柚葉の今までの過去だ」


「……お母様が、義理の母……」



最後まで聞いて、柚葉の中で全てが繋がった気がした。今までの家族の対応。柚葉はまるで邪魔のような扱い方。


優美や両親とは似ても似つかない顔立ち。


そして……朝雲家の長女として生まれながらも何も受け継がなかった異能。


全て、繋がった。


柚葉の母親がなんで嫌っていたのかということも。