桜久耶は申し訳なさそうに、だけどしっかりと柚葉の目を見て話した。柚葉は不安そうに瞳を揺らしながら桜久耶を見ている。



「そんな……。あの、皇帝様の孫ってどういうことですか?それに……旦那様は本当にただの“東條家の神主”なんですか?もうわけがわからなくて……」



混乱する柚葉の手をぎゅっと優しく握りしめる桜久耶。この部屋の空気は地獄のようだった。


ただ桜久耶に着いてきただけの柚葉だったはずなのに早々に優美と出会い、かと思えば重大な秘密を暴露される始末。


この状況の中で混乱するなという方が無理だ。



「それはだな……」


「まて、桜久耶。私から柚葉に説明しよう。少しの間、桜久耶は黙っていてくれないか?」



少しの沈黙の後。


桜久耶が話そうとした時、皇帝が遮った。その声にはっと顔を上げる柚葉。



「かしこまりました」



皇帝の命に大人しく従う桜久耶だったが柚葉の握る手を離そうとはしなかった。



「ありがとう。柚葉、混乱させてすまないな。少しばかり時間をもらえないか?私から柚葉の家族と東條家の繋がり、そして柚葉の異能について説明しよう」


「私の、家族……異能?」



ゆっくりと話し始めた。柚葉の生まれる前の出来事から、今日に至るまでの出来事を事細かく。


皇帝の説明を要約するとこういう内容になる。


皇帝の家系は代々国を納める頂点の地位として成り立っていた。異能も強く、ほかの誰からも逆らうことのできない人たち。


その家系の異能は“超強運”と“予知夢”を掛け合わせた最高で最悪な異能。超強運はなんでも自分の良い方向に物事を持っていくことが出来る能力。


予知夢は何千年先も未来を見据えることが出来る膨大な能力。


他の皇帝の家系以外にも予知夢の異能を持ったものはいるがどこもせいぜい一年後の未来を予想するくらいの力だった。


それが故になんでも自分の思い通りにできてしまう皇帝の家系は。


裏では“悪魔に取り憑かれた家系”と囁かれていた。



「そんな中、私の代まで色々問題ごとがあったらしくてな。ようやくここまで名誉挽回はした。この国の頂点に立つものとして相応しいように」


「「……」」



今の皇帝も無事に婚約し、これからという時に長女が生まれた。それが柚葉の母親に当たる人。


その人はとても美しく、誰もが欲しがるようなそんなお姫様になっていった。