「何を驚いている。私の部屋の目の前で騒ぎが聞こえたから見に来たまでだ。まさかお前とあの朝雲の娘が揉めてるとは思わんかったがな」



皇帝は豪快に笑いながらひとつの部屋を指さした。その部屋は明らかに周りの造りとは違ってかなり豪華だった。


どうやらいつの間にか皇帝の部屋の前にいた2人。その部屋の前で優美と揉めていたという。



「も、申し訳ございません。あの娘は私の妹なんです。皇帝様の前で失礼なことをしてしまって……!」



柚葉は内心の焦りから自己紹介よりも前に妹が犯したことを全力で謝った。柚葉は何も悪くないのだかあれでも一応妹。


家族のことは柚葉も背負う使命がある。


そう思っていた。



「別に構わんよ。最初から見ていたがあなたが悪い訳では無いだろう。その困った妻に寄り添い、助けた桜久耶も良い行動をした。いやー、会議の前にいいものを見せてもらったわ」


「皇帝様……。お言葉はありがたいですが柚葉が困っていますよ……」



全力で謝る柚葉をよそに意外にも親しげに話す桜久耶。皇帝は気にしていないと話しながら、桜久耶と話していた。



(……旦那様はいったい何者かしら?皇帝様と普通に話せるなんて……)


「まぁ、今のことは忘れて少し部屋で話そうか。会議まで時間はある。桜久耶の妻にも興味あるからな」


「承知しました。それじゃあ行こうか、柚葉」


「は、はい」



皇帝の誘いにより2人は目の前の豪華な部屋へと案内された。緊張しながらもなんだか皇帝の仕草や話し方に落ち着く柚葉。


その感覚に違和感を覚えながらも、3人で向かい合うようにソファに座り込んだ。



「それじゃあ皇帝様。改めまして自己紹介をさせていただきます」


「うむ。そうしてくれ」



桜久耶は柚葉に目配せすると自己紹介をするように促す。



(きっと旦那様のことは皇帝様は知っているはず。だからここは私がしっかり自己紹介しないと……!じゃないと旦那様にご迷惑をおかけしてしまう)


「お、お初にお目にかかります。私……東條桜久耶様の嫁である東條柚葉と申します。よ、よろしくお願いいたします」



緊張しながらも何とか自己紹介を終えた柚葉。心臓バクバクで冷や汗が止まらないが何とか言えたことにほっとする。



(こんなんで大丈夫かしら……)



不安になりながらも皇帝の顔を見ようとそっと視線を上げる。