数日後。


柚葉は桜久耶と共に約束の日を迎えた。それは集会で皇帝と会うこと。


柚葉は緊張していて嫌な汗がじわりと滲み出ていた。



(こんな私が皇帝様に会うなんて……。粗相のないようにしないと)



前日の夜は眠れなかった柚葉。


目の下には酷いくまができていた。それを誤魔化そうと少し濃い化粧を朱里にしてもらい、いざ出かける時間となった。



「大丈夫か?柚葉。相当疲れているな」


「わ、私は大丈夫ですよ」



王宮から送られてきた車に乗り込柚葉と桜久耶。だけど柚葉の小さな変化にすぐに桜久耶は気づいた。


化粧をしていても気づかれてしまうほど柚葉は疲れきっていた。



「そんな緊張しなくてもいいからな?お前は自己紹介して座っていればいいから。質問等は私が答えよう」


「え……。そ、それは皇帝様に失礼です!旦那様に恥をかかせる訳にはいきません!」



思わぬ桜久耶の提案に柚葉は反射的に答えていた。車の中だということも忘れ、勢いに任せて桜久耶と目を合わせた。


至近距離で桜久耶と目が合った柚葉はみるみるうちに顔を真っ赤にさせ、すぐにパッと顔をそらす。



(わ、私ったら、いったい何を意気込んでるのかしら。ここは旦那様に任せた方がきっといいはずなのに)



恥ずかしさを誤魔化すかのように心の中で言い訳のような言葉を並べる柚葉。その姿を見て桜久耶はクスッと笑った。



「わかった。質問とかに答えるのは流れに任せよう。どうしても困った時は私に頼るといい」


「あ、ありがとうございます。そうさせていただきます」



困っている柚葉に優しく助けを差し伸べるように話す桜久耶。車の中には2人だけの甘い雰囲気が流れていた。


桜久耶の言葉に安心する柚葉。


優美に会うのは嫌だけど桜久耶がいるから大丈夫。そう思えるようになっていた。



「柚葉。私たちは切っても切れぬ縁があるからな。何があっても大丈夫だ」


「……?は、はい」



しばらくの沈黙の後、桜久耶は真剣な眼差しで柚葉にそう話した。その内容の意味が分からず柚葉は戸惑いながら返事をする。



(急にどうしたのかしら?)



そんな桜久耶の雰囲気に首を傾げているといつの間にか帝都の王宮にたどり着いていた。


王宮は目を見張るほど広く、そして豪華な造りになっている。帝都は西洋の文化がかなり取り入られているが王宮はまた別に豪華さを増していた。