さらに訳が分からなくなり混乱する柚葉。答えを求めるように朱里を見るもニコニコと笑うだけで何も話してはくれなかった。



「まぁ、今日あたり桜久耶様から話があると思いますよ。今日は早めに仕事が上がると仰っていましたから」


「そうかな。確かに今日は早く帰るとは言っていたけど」



不安になる柚葉とは裏腹に朱里は何故かとても楽しそうに笑っていた。そのことに不思議に思いながらも、柚葉と朱里は他愛のない話をしその日1日は終わった。


夕方。


桜久耶はいつもより早めに仕事が終わり、部屋に戻ってきた。


仕事といっても隣にある神社の神主をしているためいつでも会える距離にはいた。


だけど柚葉はその神社に立ち入ったことがない。なので何をしているのか柚葉はさっぱりわかっていなかった。


父親からも東條家の説明をしないまま追い出されたので柚葉は本当に何も知らないままここに来たのだ。



「柚葉、ただいま」


「おかえりなさい。旦那様」



帰ってきた桜久耶を柚葉が迎える。これはすっかり2人の日課になっていた。


桜久耶は柚葉を見ると微笑みながら抱き締める。まるでそこにいることを確かめるかのように強く、優しく抱きしめた。



「……旦那様。お疲れ様でした。お夕飯、もう少しでできますよ」



大きな腕の中で柚葉は幸せを噛み締めながらそう話し出す。柚葉は1人の花嫁として軽い家の仕事を手伝っていた。


桜久耶は何もしなくていいと話したが柚葉はじっとしていることが落ち着かず、反対を振り切って使用人たちと仲良く働いた。



「そうか。いつもありがとう。柚葉の作るご飯が一番美味しくて元気が出るよ」


「そう言ってくださるなんて。作ったかいがあります……」



強く抱き締めていた腕をそっと離し桜久耶は柚葉を見つめると。顔を近づけ柚葉のくちびるに優しい口付けを落とした。


甘い雰囲気が玄関に流れ始め、ふたりは笑い合う。


初めて口付けをされた時柚葉は何も出来なかったけど、今はこうして笑い合うまで余裕な対応ができるようになっていた。


……とはいっても内心いつも心臓が張り裂けそうなくらいドキドキしていた。



(旦那様の愛を感じて幸せだけど、毎日こう口付けされると……緊張で心臓が壊れてしまいそう)


「それじゃあいくか。今日は少し話もあるからな。ゆっくり晩御飯食べて、部屋で話そう」