じっと赤い糸を見つめていると桜久耶がポツリと呟いた。



「……え?異能?」


「ああ。私は人との縁を見極めることが出来る異能を持っているんだが……それは“縁結び”と“予知夢”なんだ。縁結びの異能では運命を感じた時に赤い糸が見える」



桜久耶の言葉にピクっと反応した柚葉。


それに観念した桜久耶は自分の異能について話始めた。



(ということはこの赤い糸は旦那様の異能の力で出ているの……?そんな異能の持ち主から出てる赤い糸が見える私って……)



「つまりだな……普通の人にはこの赤い糸は濃くはっきりとは見えない。極たまに薄っすら見える人はいるが。柚葉はこれに気づいたということは……濃く見えてるのだろう?」



桜久耶の言葉に頷く柚葉。


その話を聞きながら、何故か心臓がドキドキと落ち着かなかった。たしかに異能も何も無い柚葉がこの赤い糸が見えるのはおかしい。


いくら朝雲家の長女でも異能がなければ普通の人と一緒。優美の異能を感じることはあってもそれ以外では全く力はなかった。



「柚葉は既に目に見えない中でなにかの異能を咲かせているということだ。それも縁結びと深い関わりのある異能だ。もちろん、朝雲家の異能を継いでいてもおかしくはない」



ーー予感が的中してしまった。


柚葉は心の中でそう呟いた。自分には異能がないと思い込んでいた柚葉だったが桜久耶に言われ、はっと我に返った。


朝雲家は代々妓楼を継いでおり、それにあった異能が発揮されていた。


だがしかし、柚葉はその朝雲家の長女として生まれながら何も受け継がなかった。


それは何故?


ずっと無能だと思っていた柚葉にとってはその理由は衝撃的過ぎて。すぐに受け入れることは出来なかった。



「柚葉?大丈夫か?突然変な話をしてすまなかったな。今日はもう遅いからこのまま寝てしまおう。詳しいことはまた後日話す」



黙り込んだ柚葉を心配そうに見つめる桜久耶。申し訳なさそうに謝ると桜久耶は柚葉のおでこに口付けを落として布団の中に誘う。



「……あの、旦那様……」



不意打ちの口付けにさらに固まる柚葉だったが、もう何も考えられなくて。何かをいいかけたがそれは飲み込んだ。



「……おやすみ、柚葉」



柚葉は大人しく桜久耶の隣に敷いてあった布団の中に潜り込む。


真っ赤になった顔を隠すようにして布団を頭まで被る。この短時間で柚葉は顔を赤くしたり青くしたりと表情は忙しかった。