自分の気づいた力に自分で驚く柚葉。妖は悪い者もいるとよく聞くけどここにいる妖はいい人のような感じがしていた。
桜久耶の話によるとここで化けている妖は東條家に忠誠心を誓っている為裏切ることがあれば即この世から消え去るのだとか。
その話を聞いて柚葉はぞっとしてしまった。
「ちなみに最初に柚葉に声をかけた荒木も妖だ。白狐の妖だな」
「そ、そうだったんですね」
(荒木さんも妖だったなんて!本当に人間の世界に溶け込むのが上手いのね)
その後も東條家の話や屋敷の案内を受けながら柚葉は桜久耶の後ろをついて行った。
朝雲家とは比べ物にならないくらいの広さで思った以上に案内に時間がかかった。
「最後に、ここが柚葉の部屋だ。隣には私と柚葉で二人で過ごす部屋もある。今日は疲れただろう。荷物を置いてゆっくりするといい」
一通りの案内が終わったあと、最後に柚葉の部屋に案内された。そこは広くて綺麗な和室。
奥には別の部屋に続く襖があり、桜久耶の説明を聞いてドキッとする。
「あ、ありがとうございます。こんなに綺麗な部屋……私にはもったいないくらいです」
「何を言ってるんだ。柚葉は私の花嫁だ。遠慮することない。ここでは自由気ままに暮らしていいからな」
桜久耶は優しく微笑みながら部屋を見渡した。その言葉が柚葉の胸の奥に染み込んでいく。
(自由気ままにって言われても……。どう生活していいのか分からない。ここでもきっと仕事をしないといけないわよね)
家族にこき使われながらでしか生活したことが無い柚葉は自由にしていいと言われても戸惑った。
花嫁修業もしないまま東條家に嫁いできたのだ。
絶対に何かしら粗相をしてしまうだろうと柚葉は心の中で思った。
「なにかあったら世話係の西園寺に言ってくれ。これから柚葉のことは西園寺に任せるから。夕飯の時まで少し休んでろ。私は書斎で仕事をしているから」
また新しい名前が出てきた。
(私にお世話係……?そんなことしなくても……)
返事に困っていると桜久耶は部屋から出て行った。その変わりに柚葉と歳の近い若い女性が入ってくる。
「あ、あなたは……?」
「はい。この度、花嫁様のお世話係になりました西園寺朱里と申します。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
柚葉の問に丁寧に答える朱里。



