朝雲家にも使用人や屋敷で働く妓女はいるか東條家には負けていた。使用人の数に驚いているとふとある違和感を覚えた。



(……あれ?なんだか変わった人もいるわね。雰囲気も違うような)



本当にちょっとした違和感だったが柚葉はそれに気づいたのだ。説明しながら歩く桜久耶そっちのけで首を傾げる。



「柚葉?なんか気になることがあるか?」



そのことに気づいた桜久耶は立ち止まり、柚葉の顔を覗き込む。はっと意識を戻し、顔を上げる。



「も、申し訳ございません。なんか不思議な雰囲気を感じて……」


「ああ。柚葉は気づいたのか。先にそっちを説明するべきだったな」



失礼を承知で思ったことを素直に話した。


桜久耶の前だと何故か思ったことを素直に話せる柚葉。


いつも話すのに時間がかかるのに桜久耶といる時だけはスラスラと言葉が出てきていた。



「この家は代々神社と異能を受け継いでいることは柚葉は知っているか?」


「は、はい」


「そうか。なら話は早い。この家は人の縁を結ぶ神様が宿っている。そのためこの屋敷に結界を張り、悪い“気”を寄らせないようにしていた」



桜久耶は廊下の途中にあった窓の外を眺めながら話始めた。


東條家が縁結び神社であることは父親から聞いていたが詳しいことは柚葉は知らない。桜久耶の話を聞きながら、改めて屋敷の中を見渡す。


桜久耶の話をまとめるとこういう内容だった。


縁結び神社ではその名の通り人の縁を結び、事業を成立させていた。色んな式典にも参加し、その力は膨大。


誰もが認める縁結び神社になったのだ。


それが今の東條家。


異能にも恵まれた東條家はいつしか人だけでは無く妖や神様などの縁を結ぶこともあったそう。


元々妖が視える力も備わっていた東條家。妖はこの国にとって宝のような存在だ。だからその妖立ちからの願いを無下にはできない。


それで、妖はこの家に感謝と生じて人の姿に化け、使用人として働いている。



「まぁ、この家に人がたくさんいるのはそんな理由があるからだな。大体力の強い妖がここにいる。私は妖と契約し、式もいる。普通の人間は妖が人に化けていることに気づかないのだが……さすが柚葉だな」



桜久耶はぽんぽんと柚葉の頭を撫でる。


だがその話を聞いていた柚葉は固まっていた。



(妖の存在は噂程度に知っていたけど……まさか自分に感じる力があったなんて)