……ふわふわ、ゆらゆら。


不思議な空間に柚葉はいる。そのことに気づいたけど身体は動かない。



(……あれ。私は、いったい……)



意識はあるのに身体が動かない柚葉は慌てた。だけどふと先程眠りに落ちたことを思い出し、これは夢だと自覚する。


真っ白な空間に聞こえるのは自分の呼吸の音と心臓の音。


桜久耶とのデートの後、疲れきって家に帰ってきてそのまま寝てしまったのだ。幸いにも優美と両親はどこかに出かけていて。


デートの事は何も知られなかった。



(そういえば今日館は休みだったわね)



現実逃避のように無意識に思う。優美と両親がいなくてほっとしたせいもあって、すぐに眠ってしまったのだ。


夢を見ることはよくあることだけどこんなに何も無い空間にいるのは初めてだった。



(なんでこんな夢を見ているのかしら)



柚葉は不思議に思いながらも辺りを見渡した。身体が動かないからどうすることもできない柚葉。


流れに身を任せていると。


ふと、左手の小指に違和感を覚えた。



(いったい何かしら?なんか引っ張られてるような……)



小指が引っ張られるような感覚に襲われ、そっと視線だけを動かした。


するとそこには見たことない赤い糸が左手の小指に巻きついていた。



(赤い、糸……?これは?)



ますますわけがからなくなる柚葉。戸惑いながらも指を動かしてみる。どうやらどこかに繋がっているらしく、辿ってみると。


そこには神主の衣装を身にまとった桜久耶がたっていた。今日会った時と違う雰囲気に思わず息を飲む柚葉。


なんでそんな格好を……?


それにこの赤い糸の先って……。


そんな疑問が柚葉の頭の中を埋めつくした。



「柚葉。やっと見つけた、運命の人」



桜久耶は柚葉と目が合うと微笑みながらそう話した。突然の出来事すぎて何も考えられない柚葉だったが。


何故かその言葉が胸の奥に刺さり、幸せな気持ちがじんわりと広がる。


それと同時に……涙が溢れ出した。



(あ、れ……?私、なんで泣いてるの?)



止まらない涙を桜久耶を見つめながら流す奇妙な光景。