桜久耶と過ごす中で初めての気持ちをたくさん抱えた柚葉。桜久耶のことをもう“冷たい方”とは思わなくなっていた。



「こちらメニュー表になります。ごゆっくりどうぞ」



ふたりの席に案内され、柚葉と桜久耶は向かい合って座る。お店の中は落ち着いた雰囲気でとても洒落ていた。


若い女の子の客が多く見える。


柚葉はメニューを見ながら、そっと桜久耶を見つめた。



(きっと東條様はこういう場所苦手よね。周りは若い子だらけ。私は初めてだから戸惑ったけど。どの料理も美味しそう)



メニューにはプリンやパンケーキなど柚葉が今まで食べたことないものが書かれてあった。


どれにしようかと悩んでいると。



「柚葉、このパンケーキとプリンをふたりでわけないか?」


「……いいんですか?」



桜久耶が柚葉にそう提案した。柚葉はお金をあまり持っていなくて値段が安いプリンにしようかと考えていた。


だけどパンケーキも食べてみたい……と思っていたところに桜久耶がシェアの提案をしたのだ。



「ああ。私もちょうどこのプリンが気になっていたからな。このふたつを頼もう」



柚葉の疑問に笑顔で頷く桜久耶。


桜久耶は店員を呼ぶとパンケーキとプリンを注文した。


しばらくして甘い匂いとともに料理が運ばれてくる。



「ご注文いただいたプリンとパンケーキです」



コトン、とテーブルに置かれたふたつの料理はとても可愛らしく、女性の心をくすぐる見た目をしていた。



「柚葉、先にどっち食べたい?」


「え、えっと……。プリン、にします」



桜久耶は柚葉に先に選ばせた。


柚葉は遠慮しながらもプリンを指さす。実は優美からこういった洋菓子の話をよく聞かされていた柚葉。


プリンのことが気になっていたので、迷うことなくプリンを選んだ。



「どうぞ」


「は、はい。……いただきます」



目の前に置かれたプリンに恐る恐るスプーンを差し込む柚葉。少し硬めのプリンの生地で、口の中に運ぶと。


……甘い香りが口いっぱいに広がった。



「美味いか?」



桜久耶はパンケーキに手をつけず柚葉をじっと見つめる。



「はい!とっても美味しいです!こんな美味しい食べ物、初めて食べました!」



柚葉は生まれて初めての“スイーツ”を食べて大興奮していた。


優美の話していたプリンはこんなに美味しいのかとも思っていた。