ーー眠らない街、遊郭。


その街のひとつの館で今宵、名の知れた館で働く、1人の妓女の身請け話が設けられた。



「お前は俺の花嫁だ。どんなことがあっても愛することを誓おう。私はお前なしでは生きられない」



恐ろしい程容姿が整った殿方にここまで言わせた1人の妓女は。自分の身に起こったことが信じられず。



「ーー申し訳ありませんが、お断り致します」



大事な大事な身請け話を断ってしまったそう。誰にも愛されない1人の妓女は、この愛を信じられなかった。


これでもうこの方と関わらなくても良いと思い込んだ妓女だったが、彼からは意外な返事が聞かれた。



「……そうか。ならまたここに来る。私はお前を手に入れるまで通いつめるぞ。お前の恋心が私は欲しいからな」



呆然とする妓女に彼はふっと微笑むと。


賑やかな暗闇の中に溶け込むように去っていったのだったーー。