「あ……」

 なんて返事しようか。女子共の目は刃物のように鋭くなっていて、目線を刃の切っ先のように向けて来る。文字通り殺気に満ち溢れているのが見て取れた。

「おい蓮也、ちょっと」

 ここで突然、忍がガタッと音を立てて椅子から立ち上がった。

「は、忍?」
「ちょ、吉川君?!」

 女子共が待ちなよ! と制止する中、忍は俺の右肩をむんずと掴んだ。
 で、俺はそのまま忍に教室の外へと連れていかれる。いや、待って! なんだなんだ?!

「おいおい、ど、どう言う事だよ!」
「この辺でいいか」

 連れてこられた先は階段の踊り場。幸運にも人はいない。忍はふう。と胸の中に貯めていた空気を吐き出す。

「とりあえず予鈴が鳴るまでここにいよう」
「あ……さんきゅー」
「アイツらうるせえし」

 確かにうるさいよな。と苦笑交じりに反応すると、忍はでも今日で終わりだ。と漏らす。

「アイツらは俺の後輩達にもそうやって言ってきた。でもお前が今日で全部終わりにする。楽しみだよ」
「お前……」
「竜輝の想いすら尊重できない奴は、竜輝を好きとは言えない」

 はっきりと言い切った忍の澄み切った瞳には、ガラス窓越しに青空が映り込んでいるように見えた。
 おい。そう言われたら余計に告白しなきゃ! ってなるだろ。

「頑張るよ。俺の気持ちははっきり竜輝に伝える」
「ま、その前に借り物競争があるけどな」
「あ、そうだったわ」