「もしもし忍。今いいか?」
「おう。今飯食ってるけどそれでもいいなら」

 忍の声と同時にもっしゃもっしゃと咀嚼音が小さく聞こえて来る。多分この音は白米をかきこんでいる音っぽいな。

「あのさ。俺……竜輝の事何にも知らなかった」
「そっか」
「それでさ……俺、どうすべきかって考えててさ。勿論謝らないといけないのはわかってるけど……」
「……へえ」

 ごくりと飲み込む音が聞こえて咀嚼音が一旦途切れる。その後に訪れた無音が怖さと期待の混ざった感情を抱かせにやって来るのがわかった。

「俺、色々考えてたんだよなあ」
「……何を?」

 どうせ、放課後竜輝と話してた事だろう? でも話をこそこそ聞いてたのバレたら怖いからわざと知らないふりをする。

「お前、主張time出るじゃん?」
「うん……あ、そうだ。思いついた」

 ここで脳内に雷光が光ったかのようなひらめきがした。ぴかっと浮かび上がったひらめきに俺ははっと息をのむ。
 そうだ。これしかない。

「俺、その時に告る。竜輝に俺の気持ちをぶつける事にするよ」
「もしかして体育祭の時か?」

 忍の言葉を聞き俺はまだ体育祭までまだ日がある事を思い出した。そう考えたらすぐにでも謝った方がいいような気がするけど……。

「いや、やっぱ明日謝るよ」
「待て。それなら俺がなんとかする」
「いやでも……時間が……」
「俺はさ、お前と竜輝がくっついてほしいと思ってる」

 突然の告白に、俺はへぇ? と素っ頓狂な声を出すのがやっとだった。