「そっかあ。でもごめんね。おれ、好きな人いるから!」

 いつものテンションでさくっと断る竜輝。忍は小さな声でやっぱりな。と俺の方をチラ見しながら呟いた。

「ねえ、好きな人って誰なの?!」

 ここでフラれた女子が去ろうとする竜輝の右腕の裾を遠慮がちに掴んで、彼を引き留めた。予想外の展開じゃね? 竜輝はなんて答えるんだ……?
 俺は食い入るようにして2人の様子を目に焼き付ける。

「俺の好きな人は、幼稚園の時からず~っと俺と一緒にいてくれた人」
「……そっか。私より先にずっといたんだね」

 女子は竜輝に背中を向けて走って去っていった。竜輝は彼女に待って。とか声を掛ける様子はない。

「ふう~っ……」

 竜輝がモノクロの殺風景な天井を見上げながら大きく息を吐いたのを見て、俺は忍に行こうぜ。と告げた。