「あ~……」

 返答に困っていると、もう予鈴が鳴るから教室へ戻りなさいと促された。教室に戻ると忍の方が先に戻っているのが見える。

「忍」
「蓮也、どこいってたんだ」
「ああ~……まあね……」

 あいつらの事を忍に言って大事(おおごと)になるのも面倒だと感じたので、適当にはぐらかしてしまった。俺が頭をぽりぽり搔きながら席に座るのと同時に予鈴が鳴る。
 さっき俺に迫っていた1軍女子達は、俺の方を振り返ってはじろじろと冷たい目線を送ってきていた。そんなに見てもなんもならないのに。

「はあ……」

 あいつらにとって竜輝は1軍の自分達の方がお似合いだと疑ってやまない。それは確実に理解できている。そして俺は竜輝に惚れてしまったのもそう。
 授業中もずっとどうすればいいのかと悩んでいても、湧いてくる答えは一緒だった。

 ――俺はもしかしたら竜輝にはふさわしくないんじゃないか。と。

 俺はそもそも男だし、竜輝がたとえ俺の事を好きでも、いつかは好きな女が出来るかもしれない。だってアイツは人気者だから。こんな陰日向な野郎なんて似合わないに決まっている。俺は自分に自信があるタイプでは全然ないから、その考えを覆らせる何かが思いつかない。